SCANDALがたどり着いた超自然な境地「時間がすべてを肯定してくれる」

「女の子でロックしている人って12〜13年前は本当に少なくかった」

―そうだったんですね。詞の話でいうとアルバムの中で異色だったのが「A.M.D.K.J.」。これだけ詞のトーンが全然違いますね。

RINA:これは全く違う風に書こうと思って書きました。



―怒りを感じる詞ですが、何かに怒ってらっしゃるんですか?

RINA:そうですね(笑)。

―何か具体的に嫌なことがあったんですか? 詞の中に出てくる〝三流批評家〟じゃなくて……。

RINA:〝B級評論家〟(笑)。そう言いたくなることが実際にありましたよ。

―どこかの音楽誌で何か言われたとか(笑)?

全員:(笑)。

RINA:自分たちの音楽がまっすぐ伝わらない瞬間があるっていうフラストレーションは昔からずっとあって。自分たちに向けられた言葉だけを言っているわけじゃないんだけど、去年の上半期あたりは、アーティストが、これは女性軽視の表現だみたいなバッシングを受けるニュースが何個か連続で報道されていて。そのアーティストのスタイルや作品に込めた意味みたいなものを深く掘り下げずに、出来上がった表面だけを見て『これはダメでしょ』みたいなことを言ってる評論家や世間があるのって勿体無いなってすごい感じたんですよね。みんな話題になることだけに夢中で本当の意味とか作った人のことを知ろうとしないんだなって。なんか悲しかったんですよ。自分たちもバンドをしていて、今でこそガールズバンドっていうジャンルができつつあるけど、女の子でロックしている人って12〜13年前は本当少なくて、いろいろ悔しい思いをしたし。今も一個一個その誤解を解いていきながら前に進んでいるような気もしていて、ムカつくなって思うことが単純にあるんですよね(笑)。もっと分かってほしいなって思うこととか、いろんなことに対してあって。そういうもの、フラストレーションってなかなか音楽にはできなかったんだけど、今回のアルバムは生々しさとか人間味とかっていうものをちゃんと出せたらいいなとは思っていたので、ちょっと強い言葉選びでわざと書いてみようって思いました。

―「A.M.D.K.J.」はパンチのある言葉が詰まっていて、結構怒ってるなって。ちなみに、女性蔑視の表現って誰の作品ですか?

RINA:いや、これはむしろ逆で、「これってそんなに女性蔑視かな?」って疑問に思ったことがあって、デパートのバレンタインデーの広告でSNSで炎上して、ニュースとかでも取り上げられたものがって、私はそれを見てそんなに嫌な感じがしなかったんですよ。でもすごく物議を生んでいて、嫌な思いをする人が大半だったら下げるべきだと思うけど、そもそも嫌な気持ちにさせようと思って作るアーティストはいないと思うんですよね、音楽にしてもアートにしても。だからもうちょっとその表現の奥を知ろうという人が多くてもいいのになって、すごく不思議な感じがしちゃいました。だからパッと出来上がったもので最初に伝わる印象みたいな大事さも改めて思ったし、誤解がない作品を仕上げることもやっぱり大事だなと思いつつ、でももうちょっと知ろうとしてくれる人が増えてもいいのになって思いましたね。

―誤解を恐れず言えば、<表現>というものは人を傷つけるものです。逆になんで毒にも薬にもならない表現に喜んでいるのかなって思ってしまいます。

RINA:発言しやすいんだろうなとは思うんですよ、指摘しやすい作品とか、ものに対して。だから集中してそういうものが浮き彫りに見えてくるんだと思うんだけど、表面だけで判断してシャットダウンする勿体無さと悔しさみたいなものをすごく感じました。

―なるほど。ちなみに、詞を書くとき特に気をつけていることはありますか?

RINA:そんな極端なことをあまり書いてきたことがないので。すごく政治的なメッセージみたいなものを発信してきたバンドではないし、「A.M.D.K.J.」も世間に対して刺そうみたいな意識で作ったのではなくて。ただ、自分たちの表現の中で自分たちの殻を破って、むき出しな言葉でやらなきゃいけないなって思った瞬間があったというか、やりたいなって思った。自分たちの音楽にもっとリアリティをもって歌っていけるように、あと、お客さんからちゃんとSCANDALの4人も一人の人間だという当たり前のことを普通に思ってもらえるように、怒るときも悲しいときもあるっていうのを見せてもいいのかなって思ったんですよね。

―SCANDALを検索すると◯◯熱愛とか、予測変換で出てきますからね。そこに反応してる人には恋愛することがそんなに特殊なのかと思ってしまいます。

HARUNA:あぁ、それは多分写真集を出した時のインタビューで、「私は自然に恋愛してますよ」っていうことを言ったのが面白おかしく記事になっちゃっただけなんですけどね。

RINA:ありがたいけどね(笑)。

MAMI:誰かが見てなきゃそういう風に言われないから(笑)。

HARUNA:久々にネットニュースになってちょっとびっくりしましたけど(笑)。

―でも当たり前のことを言って騒いでくれるんだったシメシメじゃないですか?

HARUNA:あれはちょうど30歳になった時だったんですけど、それがニュースになったおかげで、SCANDALってちゃんと長く活動していて、30歳を迎えてもやってるんだっていう認識に変わった人もすごい多いと思うから、それはそれで良かったことかなと思いますね。

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