元検事の捏造疑惑があった性的暴行事件、容疑者の起訴が全て取り下げられる

複数の女性に性的暴行を加えた罪に問われているグラント・ロビショー被告とセリッサ・ライリー被告の起訴を米オレンジ郡地方検察が取り下げる。(Photo by Orange County District Attorney s Office/HANDOUT/EPA-EFE/REX/Shutterstock)

米オレンジ郡地方検察は、整形外科医グラント・ロビショー被告とセリッサ・ライリー被告に対する全ての起訴を取り下げる考えを明らかにした、と2月4日のロサンゼルス・タイムズ紙が報じている。2人は複数の女性に薬を盛り、性的暴行を加えたとして2018年に起訴されていた。起訴取り下げを発表したオレンジ郡のトッド・スピッツァー地方検事は、3カ月間に及ぶ検証の結果2人の犯行を裏付ける十分な証拠が見つからなかった、と説明した。

地方検察の再検証は、当時オレンジ郡の地方検事だったトニー・ラコーカス氏の当初の捜査結果とは相反するものだった。ラコーカス元検事の話によると、捜査は両被告と一緒にパーティに出席した女性の話を受け、2016年から開始。女性は2人のアパートに連れ込まれた後、ドラッグを盛られ、レイプされたと主張していた。

6カ月後、2人目の被害者が浮上。バーで2人と一緒に酒を飲んでいたが、酩酊した後2人のアパートに連れ込まれ、性的暴行を受けたと主張した。その後2018年1月に行なわれた家宅捜査では、2人が撮影した女性たちの動画数千本が発見され、その多くには性行為の様子が収められていた。

しかしスピッツァー検事の同僚が「証拠にいくつか不備がある」ことを発見。2019年10月、スピッツァー検事は地方検事代理2名を派遣し、証拠の再検証を行なった。検証チームは数千本の動画、写真、書類、さらに4年間に両被告が交わした数千件のメール、数百時間にも及ぶ通話録音を洗い直した。

「意識を失った、あるいは身動きの取れない女性が性的暴行を受けたことを示す証拠、動画、写真はひとつもありませんでした」とスピッツァー検事。「ひとつもです」

スピッツァー検事は2018年11月、オレンジ郡地方検事の座を巡る選挙でラコーカス元検事に勝利した。スピッツァー検事は、ラコーカス元検事と彼のチームが「事件の詳細を捏造し、何度も証拠をでっち上げ、メディアの関心を引いてラコーカス氏の再選を図った」と話した、とロサンゼルス・タイムズ紙が報じている。

検察側は、ロビショー被告とライリー被告に対する起訴取り下げ請求を行うつもりだとスピッツァー検事は付け加えた。

「私がこうした事態を招いたわけではありませんが、収拾するのが私の務めです」とスピッツァー検事。「正義を果たすことは必ずしも気持ちのいいものではありません。気分の晴れないことがほとんどです。今回の件も全く気持ちのいいものではありませんが、人々の人生を左右する重要な決断です」

Translated by Akiko Kato

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