屈指の存在感と歌唱力の持ち主、桑名正博をプロデューサー寺本幸司が語る

1番売れなかったアルバムです

田家:この番組をお聞きの桑名さんのファンの方はどのようにお思いなんでしょう。そういう話を踏まえた上で、改めてこの曲をお聴きください。

・桑名正博「薔薇と海賊」

田家:桑名さんのバンド桑名正博&Tear Dropsもこの頃でしょ? 桑名さんを活かすバンドというのも考えていらしたわけですね。

寺本:そうですね。桑名はバンド思考がすごく強いから、こういう派手なアレンジのまま本当はステージをやれればよかったんですけど、それは僕らも嫌っていましたから。後半のアルバムはTear Dropsも全部アレンジもしていますけど、Tear Dropsなりのアレンジにしてステージに持っていくわけですよ。そうするとこの曲のケレン味みたいなものが出てこなくなって、「月のあかり」みたいな曲が光ってくるっていうのもたしかにあったかもしれませんね。

田家:浅川マキさんのときにもありましたし、りりィのときにもそういうバンドとアーティストっていう話がでました。やっぱりTear Dropsのように、バンドをどう組むかがそのアーティストを活かすことになるというのは寺本さんのプロデュースの仕事のなかにありますね。

寺本:基本的にありますね。桑名の『KUWANA No.5』というアルバムも、全部LAでレコーディングしていて。あれはTear Dropsが演奏していて。アメリカ人のプレイヤーを使うために向こうに行ったんじゃなくて、あの空気の中でひとつアルバムを作ろうよと言って、全員連れて行ったアルバムなので。これもアルバムの話になっちゃいますけど、松本隆さんと桑名が4つに組んだ。

田家:あれはいいアルバムですよ。

寺本:あなたにそう言ってもらうとすごく嬉しいですけど、1番売れなかったアルバムです。

田家:(笑)。

寺本:そういうものなのかもしれないです。

田家:改めてそういうものも聴き頂ければと思ってこの曲を紹介させてもらいました。「薔薇と海賊」でした。

Rolling Stone Japan 編集部

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