屈指の存在感と歌唱力の持ち主、桑名正博をプロデューサー寺本幸司が語る

ゲリラ作戦でずっとここまでやってきた

田家:最後にお聴きいただきます。桑名正博さん、79年のNO1ヒット。「セクシャルバイオレットNo.1」。

・桑名正博「セクシャルバイオレットNo.1」

田家:ナンバーワンになった後にですね、正博を俺の元に戻せといったお父様のもとに報告へはいったんですか?

寺本:報告には行きませんでしたけど、すごいいいバイブが返ってきました。大阪の方面から(笑)。だってテレビのベスト10番組すべてに出るわけじゃないですか? そりゃあお父さんからしたら日本一になったという気はするでしょう。

田家:お聞きいただいたのは、79年のNO1ヒット「セクシャルバイオレットNo.1」でした。

・竹内まりや「静かな伝説(レジェンド)」

田家:「J-POP LEGEND FORUM」寺本幸司パート4、今週は桑名正博さんのお話をいろいろ伺いました。この番組の後テーマ竹内まりやさんの「静かな伝説(レジェンド)」です。桑名さんは2012年、52歳で亡くなったわけですが、そのときに思われたのはどんなことでしたか。

寺本:なんていうのかな。先ほど話した桑名興業というのも結局倒産して、彼は多額の会社の借金を背負うみたいなことになり、ある意味では実業家としての後片付けもしなきゃいけなくなって。歌もうたっていましたし、バンドもやっていましたから、桑名一家をどう守らなきゃいけないかを考えないといけないところもあった。僕なんかは想像できないほど大きなものを背負いながらやりつくして向こうの世界に行ったかなという想いがあります。先週も覚悟してきますと言いましたけど、僕の中で桑名を話すときはいまだに覚悟がいるんですよ。

田家:70年代はいろいろなプロデューサー、あまり多くはなかったですけど、そういう意味で寺本さんはその後のフォーク系の人たち、学生上がりの人たち、学生で音楽に入った人とは違うスタンス、ちょっと大人っぽい立場でお仕事をされているなと当時思っていたんですが。

寺本:1968年が僕のプロデューサーのデビューですから、その方達とある意味では一緒のラインから始まっていますよね。その前、僕は映画を中心にやっていましたので、ある意味ではデビューは同じ時期だけど、年齢的なものを含めて感覚、音楽ビジネスというものにある宝物みたいなもの、それはなんなのかを見る目はちょっと違っているかもしれませんね。

田家:ちょっと大人っぽい感じがします。

寺本:だと思います。だからどちらかというと変な言い方ですけど、レコード会社の1人1人をピックアップして、俺はゲリラでしか物事を作ってやっていきたくないから、一種の体制の中でものを考えていくのをやめようよと言った。俺と組む以上はそういう意識でやらないかって感じですから。やっぱり浅川マキにのめり込んでくれる人、りりィにのめり込んでくれる人、そういう人たちと“つるんで”っていう言い方がいいなと思うな。ゲリラ作戦でずっとここまでやってきたという思いがあるので。そういう意味では浅川マキ、りりィ、桑名と亡くなりましたけど、一生付き合えたのは原点がそこにあるからじゃないですかね。どこにもないもの。

田家:まだまだ語っていただきたいことはたくさんあります。80代におなりになっています。お元気でいてください。

寺本:はい。

<INFORMATION>

寺本幸司
音楽プロデューサー等。浅川マキを皮切りに、りりィ、桑名正博、下田逸郎など、個性的なアーティストを多く手がける。

田家秀樹
1946年、千葉県船橋市生まれ。中央大法学部政治学科卒。1969年、タウン誌のはしりとなった「新宿プレイマップ」創刊編集者を皮切りに、「セイ!ヤング」などの放送作家、若者雑誌編集長を経て音楽評論家、ノンフィクション作家、放送作家、音楽番組パーソナリティとして活躍中。
https://takehideki.jimdo.com
https://takehideki.exblog.jp

「J-POP LEGEND FORUM」
月 21:00-22:00
音楽評論家・田家秀樹が日本の音楽の礎となったアーティストに毎月1組ずつスポットを当て、本人や当時の関係者から深く掘り下げた話を引き出す1時間。
https://cocolo.jp/service/homepage/index/1210
OFFICIAL WEBSITE : https://cocolo.jp/
OFFICIAL Twitter :@fmcocolo765
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Rolling Stone Japan 編集部

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