LEARNERSが語る新たなスタート、パーティ・バンドから「表現者」への覚醒

LEARNERS、左から古川太一、堀口知江、松田"CHABE"岳二、紗羅マリー、浜田将充(Photo by 小野由希子)

LEARNERSは今、大きな変貌を遂げようとしている。2015年に活動をスタートした彼らは、そのパフォーマンスが話題となって瞬く間に各地のライヴハウスを席巻。オールディーズのカバーを中心とした最強のパーティ・バンドとして、唯一無二のポジションを築いてゆく。同時に、このバンドの5年間の歩みは、紗羅マリーというシンガーが表現者としていく覚醒していく過程でもあった。昨年10月、台風一過直後にGEZANの主催レーベル「十三月」が緊急開催したチャージフリーのサーキット・イベント「SHIBUYA全感覚祭」をひとつの分岐点に、今また新たなうねりを起こしつつある日本のインディ音楽シーン。まさにその渦中にいたのがLEARNERSであり、それは紗羅マリーの意識に多大な影響を及ぼしたという。

そんな意識の変化が、彼らの3rdアルバム『HELLO STRANGER』には確かに刻まれている。それを象徴するのが、紗羅マリーが作詞作曲を手掛けた「シャンブルの恋」。この曲を筆頭に、LEARNERSの音楽には社会的なメッセージ性が明らかに宿りはじめている。「僕らはこれでようやくバンドになった」。LEARNERSの首謀者である松田”CHABE”岳二はそう語る。そんなLEARNERSの転機作『HELLO STRANGER』について、紗羅マリーと共にこのバンドの二枚看板を担うギタリストの堀口知江、そしてリーダーのチャーべに話を訊いた。


25年間で初めての経験

ー『HELLO STRANGER』はこれまでの作品と一線を画しているというか、ちょっと位置付けの異なるアルバムだと感じました。みなさんの実感としては、いかがですか?

チャーべ:そうですね。というか、もうここに行くしかなかった、というのが正直なところで。

ー変化せざるをえなかった、ということ?

チャーべ:そう。というのも、紗羅ちゃんの意識が決定的に変わったんです。元々LEARNERSはふわっと始まったバンドなんですけど、それが去年の夏頃だったかな。僕がある曲を書いたんですけど、その歌詞を紗羅ちゃんに歌わせるのが、なんとなく心苦しいというか、単純に似合わないなと思ったんですよね。これからは本人に作詞させないと、シンガーとしての紗羅ちゃんのモチベーションが持たないだろうなって。



ー紗羅さんの意識に変化を促したものとは、一体なんだったのでしょうか?

チャーべ:2019年にライブをひたすらやって、それこそGEZANとか、NOT WONKとか、そういう表現の質量が高いバンドと接しまくったんですね。そうなると影響されないわけがないというか、「自分たちもふわっとしてらんないな」という気持ちがおのずと生まれて。そうなったら、もう戻れないんですよ。もっと簡単にいうと、初期衝動を使い切っちゃったんですよね。

ーそれこそ昨年の「全感覚祭」なんかは、出演者側にとっても相当に刺激的なイベントだったのでは?

チャーべ:まさにその「全感覚祭」で、紗羅ちゃんは初めて長いMCをしたんです。ああいう経験があったから、彼女の表現者としての自我は芽生えたんじゃないかな。僕らメンバーも紗羅ちゃんが覚醒していく過程を見ていたので、彼女がいつかこうなるってことは、もうわかってたんです。だから、今回は「賭け」みたいな感じでしたね。自分たちはうまく変われるのか。それを受け手側はどう受け止めるのか。とはいえ、いざレコーディングが始まったらそんなことも言ってられないので、とにかくもう必死でした。


「全感覚祭」での“長いMC”が冒頭に収録された、「ALLELUJAH」のカバー(原曲はフェアーグラウンド・アトラクション)

ー制作との向き合い方が、過去作とはまったく違っていた?

チャーべ:もう、ぜんぜん違いました。25年くらい様々なレコーディングに携わってきたけど、こんな気持ちになったのはこれが初めてだったな。LEARNERSの場合はいつも僕が用意した明確な設計図があるんですけど、今回は僕もそれがわからなかったから、最後までずっと不安だった(笑)。でも、心のどこかでは絶対にできると思ってるので、とにかくなんとかしなきゃと。

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