ゼイン・ロウが語る2010年代「音楽の環境はより健全になり、人々の意識も変わった」

ゼイン・ロウから見た2010年代「今ほどエキサイティングな時代はない」

ー2010年代の音楽シーンを、あなたはどう総括しますか?

ゼイン:いい質問だね。実際、歴史上で最も大きく変化した10年だったんではないだろうか。アーティストとファンの関係が最もヘルシーでエキサイティング、そして直接的になった10年だったと思う。対話としての音楽の環境はより健全になり、人々の意識も変わった。ここ10年でアーティストは自分の本音をずっと素直に表せるようになり、透明性が深まった。特に、(ひと昔前まで)オープンになることに不安があったようなことに関しても、今では音楽やアーティストの方がずっとオープンにそのことを口にしていて、それが「何が社会的に認められ、正しいのか?」という概念そのものを変えた。まさに音楽が先頭に立って社会を導いていたのがこの10年だった。

ーおっしゃる通りです。

ゼイン:それ以外にも、アーティストのキャリアを築く方法そのものが、この10年でずっとアーティスト寄りになった。そして2000年には明らかになっていたことだが、ファンとアーティストが本当に求めているのは、自分たちが「どう音楽を聴くか」「何を聴くか」「どうやってその音楽を手に入れるか」を自分たちでコントロールするということ。それがストリーミングによって、ずっと合法的に可能になった。今では、そんな彼らの「願望」を中心に音楽業界そのものが作られるようになり、所有権も移った。そうやって出来上がったフリースペースでは、アーティストとファンが直接出会い、知り合い、信頼関係を築き上げている。そんな環境や出会いの中からキャリアを築き、新しいビジネスが生まれることもある。ミレニアムを迎えた時点では、そんなアーティストとファンの対話に、業界がどう関与できるのかという部分で、一種の摩擦も起きた。そのことで音楽そのものがちょっと停滞してしまったところがある。どちらにとっても決して安定した時代でないことは変わらないのだけどね。でも、ものすごい速さで動く、エキサイティングな今の状況を見ると、これから先は進むしかないと思う。ここ10年のように停滞することはないはずだ。

ー話を聞いているうちに、これから音楽がどうなっていくのか楽しみになってきました。

ゼイン:今ほど音楽のファンであること、そしてアーティストであることがエキサイティングな時代はないんじゃないかな。僕はそう信じて疑わないよ。

Translated by Kyoko Maruyama

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