リズムが元来有する躍動感を表現する"ちんまりグルーヴ" 鳥居真道が徹底考察

当連載が始まったのは昨年の6月のことでした。その後、クルアンビンはフジロックで二度目の来日を果たし、既出のEP及びシングルをまとめた日本限定版の『全てが君に微笑む』、そして、『Con Todo El Mundo』のダブ盤『Hasta El Cielo (Con Todo El Mundo in Dub)』をリリースしました。

一方のリオン・ブリッジズはどのような人物か。既に述べたように、ブリッジズはテキサス育ちのシンガー・ソングライターです。彼の音楽はサム・クックやオーティス・レディングといったソウルのレジェンドが引き合いに出されがちですが、個人的にはテンダーなその歌声にアーサー・アレキサンダーを思い出しました。

アーサー王とアレクサンドロス大王をかけ合わせたような大仰な芸名を持つこのシンガーソングライターはアラバマ州シェフィールド出身で「カントリー・ソウルのパイオニア」と称されることもあります。シェフィールドといえば米国音楽ファンにはお馴染みのマッスル・ショールズのお隣。後にローリング・ストーンズがカバーするアレキサンダーの「You Better Move On」は、マッスル・ショールズのフェイム・スタジオで録音された初期のヒット曲です。ちなみにビートルズの1stに収録された「Anna (Go To Him)」も彼の自作曲となります。これら初期の曲よりも、1972年に発表したセルフ・タイトル・アルバムでの歌唱の方がブリッジズのそれに近いかもしれません。



話をブリッジズに戻しましょう。彼が2015年にリリースした『Coming Home』というタイトルのデビュー作は非常にオールドファッションなサウンドのアルバムでした。ハチロクやシャッフルの曲が多く、心を大いに和ましてくれます。当連載としては「Smooth Sailin’」のイーブンなんだけどほんの僅かにハネているように感じられるリズムは見逃せないところです。「微おっちゃんのリズム」と言ったところでしょうか。

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