リズムが元来有する躍動感を表現する"ちんまりグルーヴ" 鳥居真道が徹底考察

先に挙げたミュージシャンたちが素晴らしいことは言うまでもありませんが、個人的にはクルアンビンこそちんまりグルーヴの名手だと思っています。ちんまりグルーヴの奥行き、また深度において一歩踏み込んだ表現をしているように感じます。気合の入り方が違うと言っていいかもしれない。「てめぇで勝手に括っておいてさらに序列をつけるだなんて、おまえさんいい度胸してんね?」という意見があるのは重々承知しております。どうもすみません。

私が今、仮に大学生で「クルアンビン最高~! コピバンやろうぜ!」と言って友人とスタジオに入り、実際に演奏してみたのなら、「このしょぼさは一体…」と違和感を覚えて気持ちが萎えてしまうことでしょう。いや、今でもそうした結果になるかもしれない。なんだか出汁の利いていない味噌汁のような演奏になってしまいそうです。ここでクルアンビンの演奏における出汁とは一体何なのかという疑問が湧いて来ます。

その疑問の答え、つまり出汁とは音と音の間の躍動感ではないかと考えています。隙間の躍動感と言ってもいいかもしれません。ちんまりグルーヴというものは「より少ない音、質素な音作り、控えめな音量」という要素で構成されているので、自ずと隙間が多くなります。それゆえ、いかに隙間で退屈させないか、隙間に躍動感を与えるかということがポイントとなります。



日本には「ししおどし」というものがあります。元は田畑に近づく鳥獣を威嚇するために考案されたものらしいのですが、歴史的に見ても風流なものとして捉えるのが一般的かと思います。竹筒が石を打つ「コッ」という音には庭園の静寂をより際立たせる効果があります。ちんまりグルーヴのアプローチはその真逆で、静寂を活性化するため、静寂を賑やかにするために音を発していると言って過言ではない。いや、それはさすがに言い過ぎかもしれません。

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