どうなる?音楽イベント 米音楽業界関係者が語る、コロナウイルスの脅威

John McCoy/Getty Images

先日発表されたコーチェラ・フェスティバルにはじまり、全米で続々と中止されている音楽ライブイベント。「(音楽業界のような)統合型の業界では、こうしたフェスの中止は全体に影響を与えかねません。大きなフェスが中止になれば、本当に将棋倒しのような事態になりかねないのです。前に進まないいといけない」と、米ローリングストーン誌のインタビューに業界関係者が応じてくれた。

マイケル・ドルフ氏が自ら経営するナイトクラブKnitting Factoryをニューヨーク・シティに初めてオープンしたのは、1986年のことだった。それ以来、ドルフ氏の事業はありとあらゆる困難を乗り越えてきた。「2001年(の同時多発テロの時)、私たちはワールド・トレード・センターからもっとも近いイベント会場でした」とドルフ氏は語る。「停電やハリケーンの時も店を開けてきました。(コロナ以外の)世界規模の感染症も経験してきたんです」。だが、いまも続く新型コロナの感染拡大には「別次元の深刻さと不安がある」と認めた。「どこまで感染が広がるか、誰にもわかりません」。

ドルフ氏のような全米のイベント会場オーナーはいま、厳しい選択を迫られている。店を閉めずにイベントを続けることは、とりわけ小規模なビジネスにとっては死活問題だ。だが、公の場での集会が感染拡大を助長しているという可能性も否めない。新型コロナの感染拡大を受け、すでに複数の大規模イベントが中止になっている。サウス・バイ・サウスウェスト(SXSW)とUltra Music Festival(UMF)が中止になった一方、コーチェラと姉妹フェスのステージコーチは4月から10月へと開催延期を決定した。カリフォルニア州の少なくともひとつの郡、ワシントン州の3つの郡(シアトルのあるキング郡を含む)、カリフォルニア州サンフランシスコでは、今週いっぱい大人数の集会が禁止され、ほかの地域に率先して見本を示す形となった。

「非常に難しい、見通しの不透明な状況において最善の判断をしようと努めています」とライブイベント業界の健全な発展を掲げる米非営利団体Event Safety Allianceのスティーブン・アデルマン副会長は語った。「難しい問題ですが、正解なんてありません。人々の健康もそうですが、(イベント会場)は財政面での危機に瀕しています」。

ライブ会場は営業を続けられるのか?

今回のローリングストーン誌の記事のインタビューに応じたライブ音楽業界関係者は、なんとか営業を続けたいと語った。ドルフ氏もそのひとりであり、「営業を続ける力と安全に対する懸念とのバランスを見つけたい」とドルフ氏は言う。「事態を把握しているべき官僚たちから正式な禁止令が出ない限りは、前に進まないといけません」とアメリカ最大級のロック&エクストリーム・スポーツの祭典Warped Tourの創業者で、南カリフォルニア大学の音楽業界プログラムの准教授を務めるケヴィン・ライマン氏は付言した。

とはいっても、前進するためには細心の注意が必要だ。現地時間3月9日に南カリフォルニア大学のキャンパスでメンタルヘルスに関する一般参加形式のディスカッションが行われた時も、ライマン氏は円卓に予備の消毒液を用意していた。「イベント会場経営者ができることは比較的限られていますが、どれもごくシンプルなことです」とアデルマン副会長は言う。「手を洗う、アルコール消毒液を使う、くしゃみをする時は隣の人に向かってするのではなく、腕などで口もとを覆うなど、どれも子供の頃に学校で教えられたことばかりです」。

ほかにもいくつか対策はある。「清掃員の人数を倍にし、多くの人が触れる場所を掃除する回数も倍にしました」とオレゴン州ポートランドのCrystal Ballroomのブッキングを担当するジミ・バイロン氏は言う。「ウイルス性のあらゆる病原体と戦うため、米環境保護庁(EPA)は消毒液の使用を認めるべきです」と、フェスなどのイベントの医療ケアをサポートするCrowdRXのエグゼクティブディレクターを務めるコナー・フィッツパトリック氏は指摘した。「警備員はチケットをちぎるのではなく、スキャンすることで来場者との接触を最小限に抑えています」とバイロン氏は続けた。

「病気の予防やエチケットを掲げる」シンプルな看板だって有効だとライブイベント会場へのコンサルティングを行うOak View Groupでチーフセキュリティオフィサーを務めるマイケル・ダウニング氏は指摘する。「人々に現実を見てもらうために最善を尽くさないといけません」とダウニング氏は述べた。「一部の偽情報が出回っているようですが、対策を講じなければいけません」。

Translated by Shoko Natori

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