どうなる?音楽イベント 米音楽業界関係者が語る、コロナウイルスの脅威

John McCoy/Getty Images


ファンはチケット代を返金してもらえるのか?

こうした措置に加え、イベント会場オーナーはオーディエンスからチケット代を無駄にする心配を取り除き、体調が優れない場合は自宅で静養することを積極的かつやんわりと勧めている。「チケットチームと連携し、払い戻しを希望するすべての人に対応できるようにしています」とバイロン氏は言った。

資金がある人のために、バイロン氏のアプローチのアップグレード版が存在する。「私たちのクライアントであるイベント会場のなかには、ゲート式の温度センサーを希望する人もいます。一定の温度より体温が高い時にアラートが発せられる装置です」とCrowdRXのアンドリュー・ベイゾス博士は語った。「アラートが鳴った場合は検査場所に連れて行かれ、症状や訪れた場所の履歴をチェックします」。

温度センサーはさておき、イベント会場の多くが実行できる対策は、列車や飛行機といった大都市の交通機関と大差ないものばかりだ。アデルマン副会長は「イベント会場が十分な石鹸と水を提供できないわけではないのです。(感染を防ぐために)人と人の間に2メートル弱という間隔を確保できないことが問題なのです」と指摘する。

2008年にニューヨーク・シティにオープンして以来、4都市に店を構えるほど成長したCity Wineryの経営者でもあるドルフ氏もアデルマン副会長と同意見だ。「私たちのビジネスは、電話会議で事足りるようなものではありません」。

現時点でCity Wineryは、予定していたイベントをひとつもキャンセルしていない。ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事が10日に多数の感染者を出したウェストチェスター郡ニューロシェルに州兵を派遣し、同地を「封鎖ゾーン」に指定して以来、ドルフ氏は慎重だ。遅かれ早かれ、店を営業するかどうかという判断は、オーナーの手を離れるだろう。

サンフランシスコでは、まさにそれが現実になったようだ。地元メディアNBC Bay Areaによると、11日に同市は「不必要な集団イベント」——もっと詳しく言えば、「50人以上が集まる社会、文化、娯楽などを目的とした特別なイベント、ならびに最低約1.2メートル(両腕を広げた平均的な長さより少し広い)の間隔が確保できない不必要なイベント」を2週間禁止した。同市の衛生担当者は、「科学的根拠と、リスクの高いコミュニティメンバーを深刻な被害から守ることができると現時点で確認された最善策にもとづいた判断」であると述べた。

今後はどうなる?

北西部オレゴン州では、20人未満の感染者が確認されている。「チケットの売れ行きに関して大きな被害はまだ出ていませんが、少しずつ影響は感じられます」と複数のフェスのためにアーティストのスカウティングを行うニコラス・ハリス氏は語る。「イベント参加者の年齢層にもよりますが——現時点でハイリスクと言われている人々は当然ながら、より慎重になっています」。

感染者が少ない恵まれた州でも、大規模フェスの中止の増加によってライブ音楽業界の低迷が危惧されている。「バランスが取れているとは言い難い、(音楽業界のような)統合型の業界では、こうしたフェスの中止は全体に影響を与えかねません」とハリス氏は言った。「大きなフェスが中止になれば、本当に将棋倒しのような事態になりかねません——こうしたフェスありきで組まれているツアーもありますから、クラブハウスのようなイベントがなくなってしまう恐れもあります」。

9日、ドルフ氏はCity Wineryのメーリングリストの登録者全員にメッセージを送り、予防策が厳しくなっていることを知らせた。さらにドルフ氏は、イベントを続ける意向も表明。「人間としてのニーズに応えるために——もっとも健康的かつ清潔な方法で——文化を表現し続けることは社会の一員としての責任だと思っています」とドルフ氏は綴った。「ソロー(訳注:19世紀のアメリカの作家・思想家)の言葉にも『音楽を聴くと、恐れが消える』とあるように」。

Translated by Shoko Natori

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