秋山黄色が鳴らすバンドサウンドが内省的な響きを持つ理由

秋山黄色の「文脈」が描き出す可能性

秋山黄色の音楽性からもたしかにライブでの再現を重視していない宅録から生まれるオルタナティブなサウンドプロダクションにおいてボカロや初期の米津玄師という大きな磁場や潮流からの影響は端々に感じられるし、日本バンドシーンで純粋培養され、DTMで楽曲制作するベッドルーム発のソロアーティストたちにも引き継がれたリフやキメ、4つ打ちの機能性に意識的なリズムアプローチなどは“ガラパゴス”な土壌の匂いを強く発している。

しかし、そのうえで秋山黄色の音楽性にはここから独立した文脈を形成しながら、どんどんはみ出していくのだろうなという期待をおおいに感じさせてくれる。サウンドの性格として楽曲ごとにいくつものペルソナを操るように分裂していき、どこからがポップでどこからがドープなのか、どこからがポジティブでどこからがネガティブなのか、彼の音楽はさまざまなボーダーラインを反転させていくだろう。その基軸が、この『From DROPOUT』というアルバムで打ち出されていると感じた。
本作のラストに位置づけられている「エニーワン・ノスタルジー」で秋山黄色はこう歌っている。

“他の誰かになってしまいたいのに
どんな人にもなりたくない
こんな自分が嫌なのだ
迷う事が正しい順路と
信じるくらいはいいのかねぇ
いつまでも いつまでも…”


<INFORMATION>


『From DROPOUT』
Sony Music Labels
秋山黄色
発売中

1. やさぐれカイドー2. モノローグ
3. クラッカー・シャドー4. スライムライフ5.  Chills?6.  Caffeine
7.  猿上がりシティーポップ8. 夕暮れに映して
9. ガッデム10. エニーワン・ノスタルジー

秋山黄色 「一鬼一遊TOUR」
4月11日(土)名古屋APOLLO BASE
OPEN16:30/START17:00
4月12日(日)梅田Shangri-La
OPEN16:30/START17:00
5月1日(金)渋谷CLUB QUATTR
OPEN18:00/START19:00
https://www.akiyamakiro.com/

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