音楽業界の救世主となるか? コロナによって勢いを増すライブ配信事業

Shutterstock(ギター)、Getty Images(部屋とパソコン)


ブルーノートよりも新しいパートナーである米南部テキサス州オースティンのEmpire Control Room & Garageが毎年開催し、今年で10回目となるMusic Tech Mashupも新型コロナウイルスの感染拡大を受けて中止になった。それでも、Big Room TVのグロースディレクターを務めるジェシー・オルセン氏は、ライブ配信の需要は高いと語る。「(ライブ配信)はすでにトレンドでした」とオルセン氏は言う。「それが今回のコロナによってさらに加速したのです」。

音楽をライブ配信しているバーチャル・リアリティ(VR)プラットフォーム、Wave XRの創設者・CEOのアダム・アリーゴ氏も同じような現象に気付いている。「いまはほんとうに大変です。電話がずっと鳴り止まないのですから」とアリーゴ氏は言う。ライブ配信とVRを融合し、ビデオゲームのような没入型コンサートをオンラインで提供しているWave XRは、自らを「ライブ体験会社」だと考えている。同社は独自のアバターを通じてユーザー同士が交流できるサービスを提供しており、エレクトロ・バイオリニストのリンジー・スターリングやギャランティスといったEDMユニットの配信イベントを手がけた。従来は受身的な配信という選択肢にはコンサートに参加するという社会的な側面が欠けているため、こうした差別化はファン体験に欠かせないとアリーゴ氏は語る。

「音楽業界が失った収入を取り戻し、復興できるよう、少しでもプラスの影響を与えられることを期待していますが、それ以上に孤立感が増す状況下において人と人をつなぐ手段を提供したいと思っています……一夜にして可能なことではありません——明日になると誰もがバーチャルコンサートを実施できるというわけではないのですが」——アダム・アリーゴ氏、Wave XR創設者・CEO

さらにアリーゴ氏は、新しいデジタルライブイベントの立ち上げをサポートするため、大手コンサートプロモーターと協議中だと語る。アリーゴ氏いはく、これはアーティストがそろってライブ配信という解決策をとるまでの移行的措置なのだ。「もちろん、いままでにないくらい関心度は高まっていますが、現時点ではアーティストとファンを支援できる規模のサービスに集中しています」と同氏は述べた。「音楽業界が失った収入を取り戻し、復興できるよう、少しでもプラスの影響を与えられることを期待していますが、それ以上に孤立感が増す状況下において人と人をつなぐ手段を提供したいと思っています……一夜にして可能なことではありません——明日になると誰もがバーチャルコンサートを実施できるというわけではないのですが」。

ライブ配信事業者のなかには、ツアーの代替手段を模索するアーティストの数にただただ驚く者もいる。こうした高需要に応えるため、できるだけのことをしたいというのが本音だ。コンサートを有料でライブ配信するStageitの創設者・CEOのエヴァン・ローウェンスタイン氏は、大手コンサート会場でのライブというよりは地下室でのライブに近い、と自社のサービスについて語る。Stageitのアーティストのほとんどは、自宅からコンサートを配信しているのだ。Stageitのサービスが実際に観客の前で行う音楽イベントの代替手段になるとは考えもしなかったとローウェンスタイン氏は言うが、ライブ配信がアーティストにとっての選択肢である以上は、万人のためのサービスでありたいと語る。

「できるだけ多くの人を助けたいと思っています。しかし、私たちは大きな運営会社でもなければ、大型のコンサート会場でもありません」とローウェンスタイン氏は言う。「ビールとトイレの臭いがする地下のクラブのような存在ではありますが、アーティストがファンとつながるためには力になります」。

アーティストファーストを掲げた結果、ローウェンスタイン氏は公演ごとのアーティストの取り分を80%に引き上げたと言う。小規模な公演の取り分は、それまでは63%だったのだ(新型コロナが収束してからもこの措置が継続されるかは不明)。Stageitの公演数はこの数日間で急上昇し、いまも1時間ごとにその数は増加している。3月6日の時点で20〜25だった公演数は、9日には200以上になり、15日にはわずか1日で10万ドル(およそ1100万円)を稼ぐ結果となった。参考までに言っておくが、同社のひと月の最高収入は2014年に記録した27万4000ドル(およそ3000万円)だ。さらにローウェンスタイン氏は、近日中にお抱えアーティストをStageitでライブさせたいと複数の大手ブッキングエージェンシーから連絡があったことを明かした。

Stageitは、配信コンテンツの提供に向けて映画・テレビドラマでお馴染みの『スクール・オブ・ロック』とのパートナーシップ契約に向けて準備を進める一方、インディゴ・ガールズや歌手でギタリストのダン・ナバロらが参加予定のShut In and Singという音楽フェスの配信を決めた。

Translated by Shoko Natori

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