URC50周年ベスト「愛と平和の歌」、世の中と身の周りをテーマにする歌たち

次の曲は、そんな遠藤賢司さんの極め付けです。12曲目「カレーライス」。



さっき大状況と小状況という例を出しましたけど、小状況を分かりやすい例で言うと四畳半フォークという言葉でしょうね。世の中のことよりも身の回りのことが気になるという、井上陽水さんの「傘がない」なんかも身の回りのことが大事なんだよという歌ですけどね。でも、四畳半フォークっていう言葉が良くないですよね。湿っぽい生活感といいますか、壁のシミが見えてきそうな暗いイメージがある。四畳半って名付けたのはユーミンだっていう説もありますが、その辺は定かではないですけど。身の回りソングというのはすごく普遍的な小さなラブソングということになるわけで。斉藤和義さんが今年リリースした『202020』というアルバムがあるんですが、斉藤さんも身の回りロックですね。遠藤賢司さんから斉藤和義さんに繋がってるものがあるなと、この「カレーライス」を聴いていて思いました。遠藤賢司さんはカレー好きで自身でもカレー屋を開き、そして大の猫好きでした。



「愛と平和の歌」というタイトルを聞くと、スローガン的な歌を浮かべられる方もいらっしゃるでしょうが、さりげない日常が「愛と平和の歌」なんだろうと思いますね。この曲は1971年のアルバム『風街ロマン』に収録されていました。この曲も特別なことを歌ってはいないんですよ、遊園地で君を空いろのクレヨンで描いてるというだけの歌ですけど、とても雰囲気があって2人の関係が分かる。"僕"はなぜか風邪をひいているんです、何故かは説明していない。なぜかわからないけどあまり体調が良くない。で、遊園地がそっぽ向いているんですよね、遊園地がそっぽを向いているっていうところで、風邪をひいている僕とモデルになっている君の関係が分かる。あまりいい状態ではない、微妙な2人の状態なんだなっていうのがこれだけで分かる、これが松本隆流ですよね。この“ですます”というのは、松本隆、吉田拓郎、そして遠藤賢司らが開拓した描写のスタイルなんでしょうが、そんな一曲ですね、愛と平和の歌です。はっぴぃえんどを露払いにできる人、そんなにいませんが、次の人はそうやって登場できてしまいます。

Rolling Stone Japan 編集部

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