NYの作家が見た失業者の現実「申請殺到でサーバーダウン、毎週電話で報告義務」

募る不安

その夜、夫が失業手当の申請の仕方を訊いてきた。大勢の友人たちからも、その日はもちろん、その後数週間同じ質問を受けた。私は10年以上も飲食業にいたので、求職や離職のことはよく知っていたし、同業者にもためになる助言をしてきた。だが今回は状況が全く違う。なぜなら、みんなが同時に職を失って、他に雇ってくれる人など誰もいないからだ。夫や友人は失業手当でいくらもらえるのか、と訊いてきたが、それは何時間働いていたか、どのぐらい給料をもらっていたかによる。チップをもらっている従業員と固定給の従業員では額も違う。私は失業保険に入っていたので給付対象者だった。あのバーで3年間、週に平均約45時間働いていたので望みはあった。

ついに火曜日の朝8時、申請を完了した。全ての質問に答え、申請書にも不備はないと言われたが、毎週電話をして失業中であることを報告しなくてはならないという。なんだか腑に落ちないまま日曜日に報告の電話をかけてみると、まだ失業手当を給付されていなくても、毎週電話で失業中だと報告を入れなくてはならないと言われた。友人たちは面倒なことにネットからの申請を途中まで終わらせることができたが、残りは電話で完了させなくてはならなかった。しかもそれとは別に、失業中の報告の電話も毎週入れなくてはならない。

圧倒的な数のニューヨーカーが保険申請や報告に殺到したため、電話が繋がらなくて申請を完了できない人が大勢いる。私もようやく給付額の通知書を郵便で受け取った。いつもの手取りの給料の半分ほどだった。多くの友人たちは私ほど長時間働いていないか、チップを全額申請していなかったため、給付額を聞いて涙を流した。うちの店で皿洗いをしていたスタッフの給付額は週90ドル。毎日友人から申請できなかった、いつ電話すれば繋がるのか、この後どうすればいいのか、というメールが届いた。

申請手続きはわざとわかりにくくしてあるようだった。申請件数が増えれば、サーバーが落ち続けるのは当然だ。私はコンピュータには割と強い方だと思っていたが、そんな私でさえイライラさせられた。学校閉鎖で子供が家にいる人にはどうしろというのだろう。子供のために朝食を作ったり、新しいオンライン学習プラットフォームに接続してやらなくてはならないのに、午前中ずっと電話が繋がるのを待つなんて? 窓口でも来所による申請受付を停止していたので、電話のない同僚、ましてやパソコンやWi-Fiのない同僚が気がかりだった。友人の多くがサービス業の人間で、全員が同じ状態だった。

誰にも役立つアドバイスをしてあげられない、という気分になったのは初めてだ。とにかくログインし続けて、電話をかけ続けるんだと言い続けるばかりだ。誰もが失業手当がもらえるかを心配すると同時に、勤め先のレストランが営業を再開できるのか疑問に思っていた。家賃の心配をしているのは私たちだけではない。個人経営者も痛手を負っていて、アメリカ国内の飲食業の75%が失業すると警告する意見もある。今日現在、私の夫は未だ申請を完了できていない。家賃の支払い期日は来週に迫っている。

・新型コロナの影響で米オレゴン州ポートランドのとあるストリップクラブが宅配サービスをスタート(写真2点)

Translated by Akiko Kato

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