コロナ感染爆発の米ニューヨーク、市長の問題発言

ニューヨーク市長ビル・デブラシオ。

現在、コロナウイルスによって甚大な被害状況の米ニューヨーク。ビル・デブラシオ市長は、無症状や発症前の新型コロナウイルス感染者から新たに感染が広がる可能性があることを、科学者はつい最近まで知らなかったと主張し、自身の過去の発言や行動の言い訳を行った。

発言がなされたのは、ニューヨーク市長とラジオ局WNYCのブライアン・レーラーの会話中だった。レーラーが合衆国は「数週間、数ヶ月前からこの感染症は無症状の感染者からも感染する」と知っていたと述べたとき、デブラシオ市長は、これは「ここ48時間で」わかった事実と反論した。デブラシオ市長は、4月1日にシンガポールで発表された、発症前に他者に感染させた感染者を見つけたという内容の論文を引き合いに出したようだ。

まずレーラーは「数週間、数ヶ月前から無症状の感染者からも感染すると知っていたのではなかったのですか?」とたずねた。

すると市長は「それは違う。私は何度もニューヨークの一流医師が集まる記者会見に同席して、確かに彼らはこの問題を指摘していたが、“この問題を研究している世界中の医療コミュニティからまだエビデンスが提示されていない”が彼らの見解だった」と答えた。

しかし、これは嘘だ。アメリカ国立アレルギー・感染症研究所のアンソニー・ファウチ医師も、アメリカ疾病予防管理センターのロバート・レッドフィールド医師も、無症状の感染者がこの感染症を広げる可能性があると数ヶ月前から明言していた。ファウチは1月31日の特別委員会のブリーフィングで「最初の頃、無症状での感染が起こり得るかは定かではなかったが、これが起きると現在よりもはるかに広域のアウトブレイクを引き起こすと考えていた。今ではこのウイルスが確実に無症状感染することがわかっている。しかし、以前は無症状の感染者が無症状のままで他者に感染させるのかは不明だった。最近ドイツで発表された報告によると、無症状感染が確実に起きている」と述べていた。

そんなデブラシオ市長は何週間も表舞台に登場せずに、公職者全員に社会的距離戦略が求めてられていた時期でさえ、彼はYMCAに出向いてエクササイズを行なっていたというのが真相である。このウイルスがアメリカに到達したばかりの頃、彼はこのウイルスの危険性を軽視し続け、ウイルスはすでに「制御できている」と主張していた。

2月26日のワシントン・ポスト紙は、デブラシオがニューヨーク市立病院の病床数を誇示していたことを指摘した。市長は「我々は長い時間をかけてこのような状況(危機)に備えてきた。そのため、現在、我々が対峙している困難な状況にあっても、病床数は十分過ぎるほど確保できている」と言っていたのだ。

しかし、現在の市立病院は新型コロナウイルス患者で溢れており、医師や医療従事者はマスクのような防具を配給に頼らざるを得ない状況に陥っている。

また3月8日の記者会見で、市長は何かの表面に付着したウイルスは「数分」で死滅すると主張していた。もちろん、これもその時点で発見された科学的知見とは相反するもので、すでに表面上に付着したウイルスは数時間から数日生存することがわかっていた。しかし、市長は「明らかなことは、金属やプラスチックの表面、つまり机、キッチンカウター、地下鉄のポールなどのウイルスは数分で死滅するし、このウイルスは野外で死滅する」と言っていた。

そして、CNNで以前の声明に対して反論されたとき、デブラシオは「過去に政府関係者が何をしたとしても、今は過去のことを非難している場合ではないと私は考える」と述べていた。

しかし、それこそが私たちが今すべきことなのだ。地元レベルでも、全国レベルでも。正しい行動を起こし、危機に陥っている人々を俊敏に保護した政治家を見極める必要がある。世界経済フォーラムによると、グローバリゼーション、都市化現象、気候変動の影響で、今後はこのようなパンデミックの発生頻度が増すと予想されるからだ。科学に基づいて、常に危機に備えた制度を整え、できる限り多くの命を救う役職者を選挙で選ぶ権利が私たちにはある。

Translated by Miki Nakayama

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