ザ・ストロークスが「ロックの救世主」と謳われた、2003年の1万字秘蔵インタビュー

2001年撮影のザ・ストロークス、左からファブリツィオ・モレッティ(Dr)、アルバート・ハモンドJr(Gt)、ニック・ヴァレンシ (Gt)、ジュリアン・カサブランカス(Vo)、ニコライ・フレイチュア(Ba)(Photo by Anthony PIdgeon/Redferns)

「FUJI ROCK FESTIVAL '23」で初日・7月28日(金)のヘッドライナーを務めるザ・ストロークス。彼らの歩みを振り返るべく、ローリングストーン誌2003年11月13日号のカバーストーリーを全文お届けする。2作目『ルーム・オン・ファイア』を作り上げ、ビールを求めて夜明け前のニューヨークの街をうろつくロックンロールの救世主たち。バンドのその後を知る今だからこそ、なおさら味わい深い内容となっている。


21時に到着予定だった彼は、午前0時をとうに過ぎてからやってきた。その埋め合わせをするかのように、彼は以降7時間45分にわたって筆者と行動を共にすることになる。それは彼が筆者のことを気に入った、あるいは気に食わなかったからではなく、彼のいつものノリに筆者が付き合うことになっただけだ。ジュリアン・カサブランカスはロックスターになっていなければ、優しい心を持った近所の酔っ払いに過ぎなかったに違いない。

ニューヨークが生んだクールでレトロなロックの救世主、ザ・ストロークスのリードシンガーである彼は、無意味な発言を連発することで知られている。一晩中たわごとを話し続ける彼は、同じ内容を15分間繰り返したかと思えば、脈絡を見失ってまた冒頭から始めようとする。彼はどこかに向かっているわけではなく、ただその瞬間を生きているのだろう。携帯やコンピューターはおろか、彼は腕時計さえ持っていない。それでも、彼が他人を思いやれる人間であることだけは確かだ。

「ヘロインをやるのは、テロリストとつるむようなもんだ」鼻から薬物を吸引し始めた友人に、彼はそう言った。わずか数インチの距離にまで顔を近づけ、呂律が怪しいながらも熱のこもった口調で、カサブランカスはその友人を20分間にわたって説教した。「パーティーにテロリストを連れて行くようなもんだ」彼はそう続ける。「それがいつ爆発するとも限らないんだぜ」





カサブランカスはポケットにU.S. GARBAGE COMPANYのプリントがあるグリーンのワークシャツと、色あせた黒いパンツを身につけている。そのシャツは彼のルームメイトであり、ストロークスのギタリストであるアルバート・ハモンドJrのものだ。手首には色の異なる3つのリストバンドが巻かれたままになっており、1つは先週行われたキングス・オブ・レオンのコンサート用、もう1つは2週間前に開催されたストゥージズのライブ時のもの、そして最後の1つはしばらく前に行われたザ・ヴァインズのショーのものだ。

その翌週、筆者はほぼ毎日カサブランカスに会うことになる。着ている服も手首のリストバンドもそのままだったが、下着と靴下だけはちゃんと交換していると彼は主張した。肉体関係はないという女性に毎晩介抱されていた彼は、ストリップクラブや夜驚症、そしてプリングルスが嫌いな理由について延々と話し続けた。しかし肝心のインタビューは、筆者が過去に経験したことのないほどお粗末なものとなった。それはわずか7分で終了した。

Translated by Masaaki Yoshida

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