ザ・ストロークスが「ロックの救世主」と謳われた、2003年の1万字秘蔵インタビュー

「史上最低」の一部始終

話が脱線するのはカサブランカスの癖だが、しばらく付き合いを続けていれば、彼があらゆる物事に並々ならない注意を払っていることが分かるはずだ。筆者は彼にそう伝えた。

「それは君の意見だ」まるで自分を擁護するかのように、彼はそう話す。「俺は自分の視点でしか自分を見れない。言い換えれば、他人が自分をどう見ているかは知る由もないってことさ。俺はただいい奴であろうとしてるんだけど、どうもうまくいかないんだよな」

そう言うと、カサブランカスはテープレコーダーのスイッチを切った。彼を見ると、カサブランカスも見つめ返してきた。筆者は再びレコーダーのスイッチを入れ、より易しい質問から始めることにした。

筆者:さっき話していたナイジェル・ゴッドリッチの質問に対する回答というのは?

カサブランカス:くたばれ。その質問に答える気はない。

筆者:何だって?

カサブランカス:次の質問。

筆者:はっきり言って、これは……。

カサブランカス:史上最低のインタビューってか?

彼は爪の汚れた手で、再び録音停止ボタンを押した。彼は座ったまま体を左右に揺らしながら、筆者の顔をじっと見つめている。インタビューは中止し、テープレコーダーのスイッチを入れた上で普通の会話をしようという筆者の提案を、カサブランカスは拒否した。

「深みのあることなんて何も言えないからさ」彼はそう話す。

深みのある発言を期待してはいない、筆者は彼にそう伝えた。

「隠すことは何もない」彼はそう話す。「さっき何を言ったのかもう覚えてないけど、俺が言わんとしたのは、やるべきことが死ぬほどあるのに時間がまったく足りないってことだ。でもって俺が言うべきことは、このローリングストーンのインタビューには使わせない」



彼は多くの人が神と呼ぶ、目には見えない大きな力の存在を信じており、それが今は何も口にするなと彼に呼びかけているのだという。彼が口を開くのは、ストロークスが「誰にも否定できない」何かを成し遂げ、全世界が彼らを認めた時だ。

「俺はただ、何か意味のある発言ができるくらいの存在になりたいんだよ。ちなみに、それは言葉じゃないぜ。俺はそういう未来の到来を心待ちにしていて、うんたらかんたら…」

数分後、カサブランカスはビールグラスを手に取り、その4分の3を一口で飲んでから叩きつけるようにテーブルに置くと、そばにあったGolden Teeのアーケードゲームに向かった。彼は振り向いて店内を見渡しながら、ろれつの怪しい口調でこう言った。「誰か一緒にGolden Teeをやらないか?」

誰からも返事はなく、彼は4分後にテーブルに戻ってきた。「Golden Teeは酔ってる時にやるもんじゃないな」彼はそう口にした。

そして彼は筆者の膝の上に座り、首筋に7回キスをした。口にキスしようとする彼を筆者は2度交わしたが、1度は互いの唇が触れた。筆者が口元を拭いている間、彼はふらふらと外に出て、放置されていた車椅子に乗って帰路に着こうとしていた。

Translated by Masaaki Yoshida

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