ザ・ストロークスが「ロックの救世主」と謳われた、2003年の1万字秘蔵インタビュー

「ロクでもないところも含めて愛してるよ」

タバコで一服入れた後、カサブランカスはビールとジャック&チェダーチーズとベーコンを注文し、我々はその後約3時間にわたって話した。彼は学生時代にベルトルト・ブレヒトの『コーカサスの白墨の輪』で役を演じて表彰されたこと、高校を2年で中退したこと、ニルヴァーナとパール・ジャムにインスパイアされて音楽を始めたことなどを語ってくれた。「あの時の興奮は言葉にできないよ」彼はパール・ジャムの「Yellow Ledbetter」を初めて聴いた時のことについてそう話す。「初めて酒を飲んだ時と同じくらい衝撃を受けた」

彼はもしミュージシャンになっていなければ、自分が「作家になることを夢見るバーテンダー」になっていただろうと推測する。

その夜のカサブランカスは前日とはまるで別人であり、どんな質問にも答えてくれた。唯一のタブーはElite Modelsの創設者である父親、ジョン・カサブランカスのことだ。両親はジュリアンが9歳の時に離婚している。父親とは今でも会っているが、彼は自分の様々な悪癖、特に女グセの悪さは父親譲りだと考えている。父親から教わった雄牛の集団についてのジョークを、ジュリアンは今でも覚えている。ある雄牛は日に10回セックスできると自慢し、別の雄牛は日に20回できると豪語し、また別の雄牛は日に50回できると主張した。するとまた別の雄牛がこう言った。「相手の雌牛が同じじゃないならの話だがね」

「全然面白くないよな」カサブランカスはそう話す。「でも言わんとすることはわかる」

「こないだ親父に言ったんだ」カサブランカスはそう話す。「いろんな欠陥やロクでもないところも含めて愛してるよってね」

※編注:ジョン・カサブランカスは2013年に70歳で死去

その時筆者の携帯が鳴った。相手はハモンドで、カサブランカスと話したいという。携帯を持っていないシンガーを捕まえるには、このやり方が一番なのだろう。2人は今夜、映画『フレッチ/殺人方程式』を一緒に観る予定だという。

以前ストロークスは、メンバーの大半が同じ屋根の下で暮らしていた。しかし1人また1人と、他所に移ったり彼女の家に転がり込んでいった。現在シングルなのは、メンバーの中でカサブランカスだけだ。外では激しい雨が降っていたが、カサブランカスは傘もささずに歩き始め、わずか数秒のうちにびしょ濡れになっていた。彼の姿が見えなくなると、筆者はテーブル上に残されたものに目をやった。食べかけのサンドイッチ、空になったいくつかのビールグラス、空のタバコの箱、そしてくしゃくしゃに丸められた1枚の紙。広げてみると、それはWalgreenで2.99ドルの買い物をした時のレシートだった。今日付のそのレシートに打たれていた品はただひとつ、ラージサイズのプリングルスだった。




FUJI ROCK FESTIVAL '23
2023年7月28日(金)29日(土)30日(日):新潟県 湯沢町 苗場スキー場
※ザ・ストロークスは7月28日(金)出演
公式サイト:https://www.fujirockfestival.com/

Translated by Masaaki Yoshida

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