米シカゴ市長が警鐘、米政府の対応の悪さ「国は一切助けてくれない」

イリノイ州のジェイ・プリツカー知事が新型コロナウイルスの感染拡大対策としてシェルターの設置を宣言した後、質問に耳を傾けるシカゴのローリ・ライトフット市長。 Charles Rex Arbogast/AP/Shutters

米シカゴのローリ・ライトフット市長は、トランプ大統領の新型コロナウイルス対策タスクフォースは「何もわかっていない。人々の安全を守っていないという事実を隠すことこそが妨害であり、偏りなんです」語った。

この2カ月にわたって新型コロナウイルスがシカゴの街中に音もなく触手を広げるなか、同市のローリ・ライトフット市長(民主党)は、どうにかしてトランプ大統領とホワイトハウスの注意をひこうと手を尽くしたが、無駄だった。ライトフットは、トランプ大統領とホワイトハウスの新型コロナウイルス対策タスクフォースを指揮するマイク・ペンス副大統領に何通も手紙を書き、ウイルス対策の足並みを地元のリーダーたちと揃えるよう訴えた。ホワイトハウスが「勅令」(ライトフットはあえてこの言葉を使用)を発した場合、それらを実行に移すのは地元のリーダーたちなのだから。

何カ月待っても一向に返事はこないし、シカゴの感染者は増加するばかり。そこでアメリカ第三の都市シカゴ初の黒人女性市長で、同性愛者であることを公言しているライトフットは、テレビとTwitterというトランプ大統領のお気に入りの2つのメディアにかけることにした。ライトフットは、3月に朝の情報・ニュース番組『Today』に出演した際、大統領は新型コロナウイルスについて「事実と科学的根拠のまったくない、あるいは単純に大間違い」な発言をしている、と強く非難したのだ。さらには「リーダーとしての本気を見せてください」、それができないなら人々の邪魔をしないでほしい、とTwitterでトランプ大統領に語りかけた。

地元シカゴでは、「自宅で過ごして命を救おう」とライトフットが暗い表情で発する勧告がミームの格好のネタとなり、ネットを席巻している。ずっと家にいるせいで頭がおかしくなってしまったシカゴ市民は、ライトフットを偏在的な守護神、いわば人が街角やビーチに行かないよう、がむしゃらに監視を続ける公共衛生のバットマン的存在と捉えるようになった。

米現地時間4月5日の夜、ライトフットはようやくペンス副大統領と電話で会談し、シカゴの深刻なマスクと人工呼吸器不足について議論することができた。翌日のイリノイ州の発表によると、新規感染者は1000人超となり、307人が死亡した。ライトフットのスタッフは、副大統領との会話が「友好的」だったと表現した。それは、新型コロナウイルスの感染拡大と戦うトランプ大統領とホワイトハウスの取り組みについて語るライトフットの口調を出来る限り控えめに言い表したものだった。

ペンス副大統領との電話会談前、ライトフットはトランプ政権の間違いだらけの対応、危機に備えるために複数の市長と協力してきたこと、パンデミックの長期化によるシカゴの未来について米ローリングストーン誌に語った。

本インタビューは、わかりやすさを重視して編集・要約されています。

ーこれまでの新型コロナウイルス対策タスクフォースとのやりとりについて教えてください。

3週間ほど前、実際はもっと前かもしれません。ペンス副大統領に手紙を書きました。そのなかで、共和党と民主党の両党の市長を召集するよう推奨したのです。両党に限らず、地理や規模の面でもより多種多様な地域のトップを集めるべきだと訴えました。今回のパンデミックにおいて私たちがつねに目の当たりにしているのは、次のような状況です。ホワイトハウスが出す勅令は、まずは地域レベルで実行できるものに落とし込まなければなりません。しかし、勅令の出し方ひとつをとってもまったく配慮が感じられないのです。

こうした状況から、ホワイトハウスが都市や州が置かれている現実を何もわかっていないという印象を受けます。すべての町や地域がシカゴのように大規模で安定した公共衛生システムを持っているとは限りません。ホワイトハウスがしたこと、あるいはしなかったことのせいで地域レベルでは大混乱が生じています。

Translated by Shoko Natori

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