米シカゴ市長が警鐘、米政府の対応の悪さ「国は一切助けてくれない」

ー現場の機能不全について教えてください。

いくつかの例をご紹介しましょう。1月末、ホワイトハウスは中国からの全フライトを目的地にかかわらず全米の複数の空港に着陸させる、という指示を出しました。シカゴも対象です。指示が出されたのは金曜日の午後でした。それも何の前触れもなしに。対象地域の空港の運営ならびに責任者、市長とのあいだに何の話し合いも行われませんでした。ホワイトハウスの指示を正しく理解するため、私たちはストレスに満ちた1週間を送らなければならなかったのです。

米疾病対策センター(CDC)、米国土安全保障省、米保健福祉省(HHS)にも問い合わせましたが、こうした連邦政府の機関においても担当者によって違う答えが返ってきたのです。これは後になってわかったことです。というのも、対象となったほかの都市の市長たちに連絡を取って確認したところ、彼らも同じ機関から異なる回答を得ていたのですから。たとえば、HHSが私たちにあることを言い、ロサンゼルス、サンフランシスコ、シアトル、ワシントンDC、アトランタにまったく別のことを言う、という状況です。誰からも率直な回答をもらうことができませんでした。

これをきっかけに、初日からばかげた状況が続いていることに気づいたのです。計画性もなければ、常識もない。連邦政府が出す勅令の負担に耐えなければならない地域レベルの職員と協力しようという姿勢も一切ありません。

その週末を乗り越えた私たちは、強い苛立ちとともに国は一切助けてくれない、という事実に気づいたのです。連邦政府が頼りにならないことはわかっていました。連邦政府が本腰を入れてしかるべきことをしてくれたらよいのですが、自力でどうにかするしかないのです。あそこにリーダーなんていません。CDCも難しい状況下で最善を尽くしていますが、どうやら沈黙を強いられているようですね。

そしていまや、大統領のお墨付きを得たジャレッド・クシュナー(訳注:トランプ氏の娘婿で米大統領上級顧問)のStrategic National Stockpile(訳注:連邦政府の医療品備蓄、通称SNS)をめぐるばかげた発言もあります。SNSの医療品備蓄は連邦政府のものであり、州のものではないなんて。どうしたらそんなことが言えるのでしょう? 連邦政府の準備不足のせいなのに。

人々の安全を守っていないという事実を隠すことこそが妨であり、偏りなんです。

ー大都市の市長として、タスクフォースと連邦政府が現時点でも着手しておらず、今後やるべきことは何だと思いますか?

リーダーとして、自分の発言内容をしっかり理解している人が声を上げること。まずはこれが最優先事項です。

赤い州(共和党支持)と青い州(民主党支持)の現状を見てください。これはなにも党派争いではありませんし、そのようなものであってはいけません。ジョージア州知事のように、「大統領の指示を待ってるんだ。指示が出るまでは何もしない」という人もいるんです。そんな時に大統領が『クロロキン(訳注:米で未認証のマラリア薬)とやらはどうかな?』なんて発言をするから、本来の意図とは別の解釈をした人々が薬物を大量に摂取して命を落としてしまうのです。

私たちが必要としているのは、正直な人——真実だけを語ってくれる人です。科学とデータにもとづく真実を語ってくれる人が必要なんです。医療品備蓄がないなら、正直に言うべきです。

私たちと協力し、コロナに対処するための全米ネットワークの強化に取り組んでほしいです。東西南北の近隣州が一丸とならなければ、何の意味もありません。私は、隣のアイオワ州でどのような対策が取られているか把握していません。私たちがどれだけ必死に努力し、難しい決断を下しても、西のお隣さんは、アメリカはいまパンデミックの渦中に置かれている、という自覚を持っていません。そんな時こそ連邦政府が介入するべきです。

先週、地元紙シカゴ・サンタイムズにイリノイ州の職員がマスクを持っている医療サプライヤーと落ち合うため、ハイウェイを猛スピードで疾走した、という記事が載っていました。職員の女性は、マクドナルドの駐車場でサプライヤーに340万ドル(およそ3億7000万円)の小切手を渡したそうです。ほんとうに、どうかしていますね。

あなたが第三国の市場に行ったことがあるかどうかは存じ上げませんが、たとえば、ツアーバスから降りたとしましょう。すると全員があなたに何かしらのものを売ろうとします。これは、まさにその逆ですね。供給源を見つけるのに必死なんです。そんな時、「お望みのものはあるけれど、現金で前払いしてくれないと渡せない」という人が出てくるんです。連邦政府が準備をしていなかったせいで、このようなことが起きてしまいました。

Translated by Shoko Natori

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