韓国生まれ、東京育ち、ルーツは嵐 kim taehoonとは何者か?

─ネット上だと、韓国の人に対する罵詈雑言が酷いことがあるじゃないですか。あれを観ていて気が滅入ってくるし、なんでそこまで言えるんだろうって。kimさん自身、差別的なことを体験された記憶はありますか。

ぼくの父は日本語が流暢なんですけど、バックグラウンドは韓国文化なので、会社で同じ成果を上げていても平等に評価されないとは感じていたようです。それもあって「あなたたちは外国人なんだから、日本に住むなら他より努力しなさい」ってよく言われていました。父の言っていることもよく分かるんですけど、社会に出たことのない自分は今のところそういう局面になったことがなくて。時代や考え方の違いなのかなとも思うんですけど、多様性を認めていくことがメインストリームに近づいていっている感覚はあるしポジティブには考えています。でも、難しいですよね。

―難しい?

堅い話になっちゃうんですけど、ぼくが浪人して現代史の勉強をしていた時、戦争がきっかけで国籍ができたということを学んで。要は、国としての団結力を強めるために「私たちはアメリカ人だ」「私たちは日本人だ」「戦うぞ」みたいな流れができたらしいんですよ。それって、すごくしょうもないなと思って。そこの差って曖昧なのに韓国人は短気とか、日本人はおしとやかとか、1つの枠にはめてしまうのはもったいないしつまらない。そうじゃない人もたくさんいるっていうことだけじゃなくて、そういう固定観点によってそうじゃない人がそうなってしまうことにも繋がると思いますし。だからこそぼくは自分のことを何人とは言いたくはない。「”kim taehoon”です」で十分。例えば、猫ひろしさんが帰化してカンボジア人になったけど、本当にカンボジア人になったのかと言うと全然違うじゃないですか。そういう認識はどんどん変わっていってほしいなと思いますね。

─kimさんのそういう枠に囚われない考え方は、どこで培われたんでしょう。

大学2年生のとき、1ヶ月ぐらい1人でヨーロッパを周ったんですよ。そのとき死にかけたり、精神的にもやばい経験をしたり(笑)。世間で言われている美しいヨーロッパとは真逆の風景を見たりして。物事にはいろいろな側面があって、実際に体験してみないと分からないし、多角的に物事を見るという必要性を感じたんです。極端な話ですけど、イスラム国って多くの国から見たら悪ですけど、彼らから見たらそれが正義なわけじゃないですか。正しい、悪いとかじゃなくて、ものの見方としてそういう見方がある。その後、もっといろいろな幅を広げられるかなと思ってイギリスに1年留学したんですけど、広がらなかったんですよね。自分の軸ができていたっていうのもあるんですけど、日本にいるのと変わらなかった。どこへ行っても自分は自分だし、自分の家のベッドが1番好きだし、夜遊びは苦手。人間とか環境は違うんですけど、置かれている場所によって自分が順応して、そこで残るものって結局同じだったんですよ。本当にいろいろな体験から、多角的な見方をするようになったのかなとは思います。

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