cero・髙城晶平×Suchmos・YONCE、2010年代を切り拓いた両雄の視点

レーベルの先輩・SAKEROCKから
ceroが受け取っていたもの

ーその気づきがあって、『POLY LIFE MULTI SOUL』に向かっていったと。逆に、YONCEくんから見たSuchmos結成当時の時代の空気感はどんなものでしたか?

YONCE:髙城さんが「牧歌的だった」と言う時代は、まだSuchmosのメンバーはそれぞれ別のバンドをやっていて、箸にも棒にもかからないもどかしさを感じてたと思うんです。でも、Suchmosに関しては、Suchmosという集まりができた瞬間のスパークみたいなもので、1st(『THE BAY』2015年7月発売)から2nd(『THE KIDS』2017年1月発売)まで突っ走ったところがあって。ceroが幼虫のまま出てきたとするなら、俺らは多分、気づいたら羽化してたのかなって。


2015年9月に渋谷WWWで開催されたSuchmosのパフォーマンス

髙城:結成からデビューまでが短いんだっけ?

ー2013年結成で、2015年4月にデビューEP『Essence』をリリースしています。ceroは2004年結成なので、デビューまでの時間という面では違いがありますね。

YONCE:俺らはとにかく「音楽で飯食いたい」っていうのが強かったんです。当時は「ティーンのバンドがデビューをかけて争う」みたいなコンテストがいっぱいあったんですよ。

髙城:ああ、「閃光ライオット」とか。

YONCE:みんな、そこに向けて戦略を練るんです。どういう工夫をして、どういう尻尾の振り方をすると、目を引けるのかって。でも、当時やってたバンド(OLD JOE)では、「それで人気者になるのってどうなんだろう?」という葛藤も覚えてて。Suchmosはそこについて考える間もなく、気づいたらスパークしてしまったような感覚が強いんですよね。


髙城晶平(Photo by Masato Moriyama)

髙城:YONCEくんたちは出発点がすごくハングリーだけど、俺らはもともとそういう感覚が全然なくて。「牧歌的」っていうのはそういうことで、「これで食ってやる」みたいなのが欠けてたんです。SAKEROCK、クラムボン、ハナレグミとか、2000年代を盛り上げた人たちを見て俺らは育ってきたわけですけど、そういう人たちは「上に行こうよ」というよりも「自分たちのローカルを豊かにしようよ」という方向に行ってて、俺らはそれに影響を受けた世代で。だから、僕より下のYONCEくんたちの世代は、その感じにムカついてたんじゃないかなと思って。言ったら、「売れるぞ!」っていうよりも、ちょっとヒッピーみたいなノリがあって、みんなの個性がバラバラにあってたまにくっついたり離れたりする、という集まりが東京にも名古屋にも北海道にもあって……そういう感覚いいよね、みたいな。きっと満ち足りてたんですよね。その感じにイラついたりとかあったんじゃないかなって。

YONCE:俺らにはそういうコミューンみたいな集まりはあんまりなかったですけど、俺も正直「音楽で食いたいは食いたいんだけど」って感じで、周りとの温度差を感じてた部分はあって。楽屋で対バンの人たちの話を聞くと、銭の話っていうか、「今日◯◯さん来てるよ」みたいな感じの話が多くて、目上の人にイラつくよりは、その温度差にイライラしてたんですよね。

髙城:「もっと音楽の話をしようよ」みたいな?

YONCE:そうですね。音楽とか映画の話とか。未だによく遊んでる友達とかは、そういう話ができる集まりだから、そういうやつらと出会えたのはよかったなって。

Edited by Yukako Yajima

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