cero・髙城晶平×Suchmos・YONCE、2010年代を切り拓いた両雄の視点

ジャズの土壌から生まれた要素が
2010年代の音楽に与えた影響

ー2010年代のシティ・ポップを最大公約数的な言い方で言うと、「ブラックミュージックの要素を含んだポップス全般」ということになると思うんですけど、それって2010年代の世界的なトレンドともある種リンクしてたと言えるし、ceroとSuchmosもその大きな流れの中にいたバンドだと言うことはできると思うんですね。

YONCE:2013年に、ダフト・パンクの「Get Lucky」が日本でも街中でかかってたじゃないですか? 俺らはわりと短絡的なんで、ああいうのから影響を受けた部分はデカいですね。

ー当時のceroで言うと、徐々にネオソウルに傾倒していく中で、2014年にディアンジェロが復活したりして、より強く時代性を帯びていきましたよね。

髙城:僕らもミーハーだからっていうのはあると思うんですけどね(笑)。もともと活動を始めた頃はUSインディの時代で、スフィアン・スティーヴンスとか、それこそ上手さよりアイデア……あの人たち自身は上手いんですけど、できないフルートを吹くとか、そういうアイデアは2000年代後半のUSインディから来てる部分が大きくて。でもいつからか、もっとスキルの方になっていきましたよね。ロバート・グラスパーとか、本物のスキルを持ったジャズの人たちがかましに来る、みたいな(笑)。やっぱり、ジャズが大きそうですね、スキルが急に見直されたのって。

ージャズの人たちがいろんなジャンルと繋がっていったのは大きかったですよね。

髙城:ceroは本メンバー3人だから、たくさんサポートを呼ぶのが当たり前になってて。そうやって「クルーとして音楽を提示する」みたいなことが世界的に見ても当たり前になりましたよね。その中に、ジャズの人を呼んできたりもするっていう。

ー逆に言うと、Suchmosのような固定メンバーのバンドがむしろ珍しいくらいの状況になりつつあるというか。

YONCE:確かに、バンド形態を崩さないにしても、ゲストで誰かをフィーチャーしたりするのが多いけど……まあ、時が来ればそういうのも全然やりたいし、最近は「オケを入れてみたい」という話も結構してるんです。これまではわりとオールドファッションな制作をやってきて、ひたすらジャムったりとか、バンドという形態を持って動き続けていないと生まれないものに重きを置いてきたけど、最近はそうでもなくなってきていて。メンバー各々が持ってきたものを、全員でプロデュースするみたいな考え方も、これからはやっていくかもしれないです。

髙城:Suchmosを最初に見て「なるほど」と思ったのが、マニピュレーターというか、DJがメンバーにいるでしょ? そういう人らって案外いなくて、ある意味フィッシュマンズ的だなと思った。フィッシュマンズはコーラスを欣ちゃん(茂木欣一/Dr)がサンプラーで出してることが多くて、Suchmosもコーラスを出すじゃん?

YONCE:まさに、ですね。



髙城:マニピュレーター文化って、今海外だと当たり前で。バンドだろうがラップだろうが、マニピュレーターありきの音楽の世界があるじゃないですか? ちょっと前までは「その場に見えてる人たちがやるのが音楽だ」というマッチョイズムみたいなのがあったけど、今はもう解き放たれてて、それこそジャズの人たちですらマニピュレーターがいたりする。Suchmosはオーソドックスなバンド形態ではあるけど、でもDJがいるっていうのは今風だったなって、今でこそ思いますね。大人の人たちは最初「懐かしい」って言ったと思うんですよ。ORIGINAL LOVEにL?K?OがDJで入ってる、あの感じというか。でも、今は一周して、むしろ早かったんだなっていう認識が俺の中に生まれつつあります。最近は(DJのKCEEが)ギターも弾いてるんでしょ?

YONCE:弾いてますね。逆に言うと、俺らがceroのライブを見て喰らったのって、オーガニックというか、有機的な部分で。「やっぱり、そっちもしてえよな」って。なので、もちろんDJの曲もあるんだけど、そうじゃないバンドの姿があってもいいよなということで、最近はギターを持つことも増えてて。

髙城:そういうのすごくいいよね。アンダーソン・パークが2018年にフジロックに出たときもそういう感じのバンド編成で、バックDJがフィジカルな絡み方もしてて。

YONCE:みんな達者なんですよね。

Edited by Yukako Yajima

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