世界保健機関(WHO)の実態に迫るーーコロナを巡る米国との関係

WHOの働きが話題になることはまずないが、活動はほぼずっと注目されてきた。機能不全とまでは行かないにしろ、WHOはずっと組織とスタッフの問題に悩まされてきた。さらに、各国の調整役としての政治的センスに欠ける専門家の集まる閉鎖的な公的機関だ、という評価を受けている。「いつでも彼らは、“我々が世界保健機関だ。我々こそが最高の知識を有している。我々が対処し、後で皆に教えてあげよう”という態度だ」と、ハーバード・グローバル・ヘルス・インスティテュートのアシシュ・ジャー所長は言う。「信頼性を高めようとしている組織としては、まずいやり方だと個人的には思う」。

WHOの抱える問題の原因は、世界中の公衆衛生のニーズに応えねばならないという幅広いミッションと、同組織を資金的に支える各国の政治的な思惑との板挟み状態にある。WHOのリソースの大部分をどのように振り分けるかは、194の加盟国とその他の関係組織にかかっている。

WHOの運営予算は、各加盟国に割り当てられた分担金と、任意による拠出金という2種類の歳入で賄われている。各加盟国には割り当てられた分担金を支払う義務があり、WHOは自由に用途を決められる。拠出金は、加盟している超大国に加えてNGOや民間組織、慈善団体、例えばカーターセンター、ブルームバーグ・フィランソロピーや、長期に渡るWHOの大口寄付者のひとつであるビル&メリンダ・ゲイツ財団などからの寄付金だ。

WHOの執行理事会に出席したテドロス・アダノム・ゲブレイェソス事務局長(2020年2月 ジュネーブ)(Photo by Salvatore Di Nolfi/EPA-EFE/Shutterstock)

一方の拠出金は国際的な公衆衛生のニーズに合うか合わないかは問わず、寄付者の意向に沿った目的に充てられることが多い。例えばゲイツ財団の一番の関心事はポリオの根絶で、2018年には1億ドル(約110億円)近くを寄付している。これは米国を除く他の国々が拠出している金額の2倍近い。ちなみに米国は約1億3200万ドル(約143億円)を拠出している。つまりWHOの予算の大半は、ポリオ根絶のための取り組みに充てられていることになる。そのため、ポリオに対してWHOは必要以上に力を入れ過ぎだとする批判の声も上がっている。

「ポリオ対策へ向けられている全てのリソースを考慮すると、ポリオ感染の症例がほとんどない現状では、果たして適切な対応と言えるだろうか?」と、グローバルな保健ガバナンスに詳しいジェレミー・ユードは言う。ユードは、ミネソタ大学ダルース校教養学部の学部長も務める。「はしかやマラリアなど、より多くの感染者が存在する病気に使うことはできないのだろうか。それほど深刻でない案件に多額のお金を費やしているようにしか思えない」。

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Translated by Smokva Tokyo

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