The 1975も魅了した日本人、リナ・サワヤマが発信する歪んだ社会へのメッセージ

「日本に対するステレオタイプ」から解放されるために

―リナから見た日本についても聞かせてください。アルバムに収録された「Tokyo Love Hotel」では、東京を訪れる観光客について書いていますよね。歌はリナのルーツにあるブリトニー・スピアーズや宇多田ヒカルを彷彿とさせながらも、ライナーノーツでは「新宿で叫んでる観光客を見て、東京をディズニーランドのように捉えているのかと思った――ここはファンタジーの世界で、人のことをキャラクターであるかのように見てる」と指摘されていたのが印象的でした。

リナ:この曲を書こうと思ったきっかけは、他国から日本へ旅行をする人たちに対して思うところがあったからだけど、それよりも、私は日本の文化を自分の作品やアートワークでなかなか使えないことに対するフラストレーションを露わにしたいと思ったんです。というのも、たとえば私が自分のアルバムジャケットに漢字を使ったとしても、それはとても「ベーシック」なものになってしまう。でも、日本人じゃないアーティストが、日本の文化を知らないのに、日本語の文字をカジュアルに使ってたりする。とても皮肉なのは、私がこの曲を書き上げた翌日に、白人のアーティストが「Tokyo Love Hotel」というまったく同じタイトルの曲をリリースしたんです。「まさに私がこの曲で言いたかったのはこういうことだよ!」って思いました。日本を好きになるのは全然いいんだけど、ちゃんと日本の「人」や「文化」を気にしてほしいし、知ってほしいと思うんですよね。ただ「アニメ」「原宿」とかだけではなくてね。それに、私自身の、「私はどこに属するのだろう?」「自分の文化とはなにを指すんだろう?」といった苛立ちもありました。

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―「日本=アニメ」みたいなイメージがあまりにも強く着きすぎている理由としては、日本のエンタメ業界が経済に走ってそれをプッシュした側面や、政府が「クールジャパン」と言ってそれを推したからなど、日本側が自ら作った要因もあるように思います。

リナ:そうですね。政府がイニシアティブを取った「クールジャパン」では、たとえば2016年のロンドンオリンピックでセレモニーをやったときもアニメやゲームをプレゼンテーションしていて、それらが政府としては押し出したいイメージなのだろうなと思ったし、実際にそれが今の日本の象徴になっていますよね。あと、「KAWAII」のカルチャーが流行ったときも、日本人の女性に投げかける言葉が「KAWAII~」しかなくなったような状況になっていたんです。4年くらい前、モデルとして撮影現場へ行くたびに、みんなが「あら~、KAWAII~」って言ってきたり、撮影のディレクションも「KAWAIIをやりましょう」って言われたりして、もう超退屈だった。だから「KAWAII」がフェードアウトしたことは、よかったなと思っているんですよね。もしかしたら、もう私に言ってこなくなっただけかもしれないけど(笑)。

―KAWAIIとか、アニメとか、芸者とか、ある一部の文化だけを見て「日本の女性はこういう感じ」というイメージを抱かれるのもしんどいですよね。私がアメリカに住んでいたとき、「日本人の女性は今も毎日着物で過ごしているんでしょ?」って言われたこともありました。

リナ:欧米人が日本の女性に対して抱いているステレオタイプなイメージが、具体的にどういったところから生まれているのか、というのは実際私もすごく関心を持っていることなんですよね。正直、そういうイメージはもともと男性が勝手に生み出したものばかりだと思う。たとえば、私はゲームが大好きだけど、ゲームに出てくる女性像は、もう、大体本当に最悪。ゲームとか芸者とかから、日本の女性のイメージを強く持ってる人は多いと思うんですけど、「現実の女性に対する目線はどこいった?」って思いますよね。日本で毎日一生懸命働いてる女性とか、LGBT+の女性とか。ただステレオタイプで思考を止めるのではなく、日常を生きてる女性たちのことをちゃんと見てほしいなと思うんです。

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