銃乱射事件の教訓はどこへ、アメリカで急増する銃所有者に密着

銃は家庭内暴力をエスカレートさせる

訓練を受けていないであろう新規銃所有者が増大すれば、すでに収拾がついていない状況がさらに悪化しかねない、と革新的シンクタンクCenter for American Progressの銃規制部門副会長チェルシー・パーソンズ氏は言う。「私が特に心配なのは、今銃の購入を選択した人たち、特に今回初めて銃を購入する人たちは、不安や恐怖に駆られて決断しているという点です」 。家に銃器を常備していると、自殺や殺人の危険が増加する、という研究結果もある。法と秩序の崩壊に対する恐れや社会的孤立による認知ストレスで、殺人や自殺が増える可能性をパーソンズ氏は懸念している。

封鎖や自宅待機命令が原因で家庭内暴力が世界中で急増する中、銃規制を訴えるNPO団体Everytown for Gun Safetyのジョン・ファインブラット会長は、駆け込み購入によって銃器が虐待者の手に渡るのではないか、と危惧している。「ストレスが長期にわたるような状況では家庭内暴力が急増することがわかっています」とファインブラット氏は言う。「銃が身近にあることで、虐待者が女性の被害者を殺害する可能性が5倍に膨れ上がります。ですから政治家にはこれまで以上に、虐待者の手に銃が渡らないようにすることが求められています」

全米ライフル協会(NRA)はパンデミックを利用し、銃を持つ権利を主張している。協会は銃器販売業者を閉鎖の対象にしたニューヨーク州とカリフォルニア州を訴え、両州が銃の販売店を不要不急の業務に分類したことを嘆くプレスリリースを発表した。「自衛のために銃を使用したことがある人なら、誰一人として不要不急だとは考えないでしょう」 とNRAのウェイン・ラピエールCEOは声明の中で述べた。

協会の主張からは新規銃所有者への安全対策を考慮せず、必死に守りに入る姿勢が見て取れる。代わりにNRAはパンデミックに合わせて自衛のために銃を購入することをTwitterで推奨し、記録破りの売上数について「銃を憎む政治家はこれが気に入らないようだが、パンデミックで銃販売店を閉鎖しつつ、囚人を釈放しておいて、一体彼らは何がしたいのか」とツイートした。

Translated by Akiko Kato

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