銃乱射事件の教訓はどこへ、アメリカで急増する銃所有者に密着

怯えた人々はさらに武器を手にする

パーソンズ氏は協会のこうした対応を「全くもって無責任」だと評した。「武器の正しい収納方法を指導し、リーダーシップを発揮する良い機会でしたのに」

「彼らは安全推進には関心がないんです」と、ファインブラット会長も同意見だ。「彼らは銃の売上を伸ばすことにしか興味がありません。そのために彼らはアメリカの一般大衆を震え上がらせます。今やっているのがまさにそうですね――その度に必ず、憲法修正第2条を盾にするんです」

パンデミックに関連した銃絡みの事件はすでに起きている。ニューメキシコ州では、新型コロナウイルスから身を守るために購入したという銃で、男性が13歳のいとこを誤って射殺した。ジョージア州の男性は新型コロナウイルスをうつされるのを恐れ、医療用マスクと手袋をした2人に銃を突きつけ、逮捕された。メイン州では銃所持違反で男性1人が警察に逮捕された――パンデミック中に自分の身を守るのに銃が必要だったと言う。

漠然とした不安や失業など、パンデミックが引き金となった心理的・経済的ストレス要因は事態が終息しても改善しない傾向にあり、銃による自殺や死亡事件が急増しかねない、とファインブラット氏は言う。銃による事故や犯罪を防ぐべく、Everytownは各州の知事や地元議員と協力して、適切な銃の収納方法の普及、厳格な身元調査の実施(現行の連邦法では、72時間以内に身元調査が完了しなかった場合、購入者はそのまま銃を所有出来る)、家庭内暴力被害者が接近禁止命令をすぐに得られるようにする、などの措置を進めている。

そうは言っても、今後の行く末が個人の力の及ばない状態にある今、一部の人々にとって唯一取れる行動は、差し迫った危険に備えることだけだ。「これからもっとひどい状況になると思います」 。名字は伏せ、ジェニーとだけ名乗るニュージャージー州南部在住の女性は言う。「自分と家族を守れる状態にしておかないと」

狩猟一家に生まれたジェニーはすでに2丁のピストルと数丁の拳銃を所有しているが、コロナウイルス・パンデミックをきっかけに、今までよりもかなり多めに弾薬を購入するようになり、すでにAmmo.comとCheaperThanDirt.comで注文済みだ。「うちは世界滅亡に備えたプレッパーではありませんが、まさかの事態には備えています」と、48歳の彼女は言う。近所で車強盗があったというFacebookの投稿を目にしてからは、犯罪がエスカレートするのは時間の問題だと恐れている。過去にも自暴自棄になった人がどんな行動をするか目の当たりにして来た、と彼女は言う。そして仕事も収入も失った人々は、まさに自暴自棄の一歩手前まで来ている。

「銃を持つ人間として言わせてもらえば、私たちの狙いは――銃にかけたわけではありませんが――人を殺すことではありません」とジェニー。「ここは私の家、私の敷地です。誰かが押し入って家族を傷つけようものなら、自分たちで身を守る以外にありません。だからしっかり準備をしておかなければいけないんです」

・殺されたセックス・セラピスト、ハリウッドの光と影に翻弄された人生(写真)


Translated by Akiko Kato

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