川谷絵音が語る、ザ・ストロークスとバンド音楽の可能性「ギターはこれから来ると思う」

川谷絵音(Courtesy of ワーナーミュージック・ジャパン)


「また時代がストロークスに追いついた感じがする」

―じゃあ、ストロークスにどハマりしたきっかけは?

川谷:2013年に(5作目の)『Comedown Machine』が出て、それがめっちゃ好きで。「Tap Out」にはすごく影響を受けてて、当時のインディゴの曲作りのときに、「こういう感じのギターを弾いてほしい」って、長田くんに何回も言ったことがあります。あとは、ジュリアンって声が低いイメージだったんですけど、「One Way Trigger」の裏声を聴いて、そこで改めてめっちゃいい声だなって気づいて。それまでは渋いロックなイメージで、きれいに歌うイメージがあんまりなかったから、結構裏切られたというか。でも一回そのイメージが(自分のなかで)定着すると、昔の曲もめちゃくちゃよく聴こえるようになったんですよね。(『Is This It』収録曲の)「Last Nite」とかも、昔は全然わかんなかったんですよ。「世界のロック名曲ランキング」みたいなのに入ってても、「そんなに良いかな……」とか思ってたけど、今はよくわかるっていうか。イメージって大事だなって。



―「Tap Out」のギターに影響を受けたっていうのは、どんな部分ですか?

川谷:それまでギターの歪みに対して新鮮さを感じることがほぼなかったんですけど、「こんな音が出せるんだ」って思ったんですよね。それは今回の新譜『The New Abnormal』を聴いてもそうで、「この音どうやって作ったんだろう?」って思いました。ギターのコードがジャーンって鳴っても、Spotifyのプレイリストとかだとしょぼく聴こえちゃうじゃないですか? いわゆるトラップっぽい音の方がよく聴こえるわけで。でも、今回のはギターが全然しょぼくなくて、分厚過ぎないし、アルペジオも絶妙な音で。プロデューサーが(リック・ルービンに)なったのも大きい気もするんですが、また時代がストロークスに追いついた感じがするっていうか。

今ってチルなR&Bが飽和して、ポストパンク的な音が盛り上がってるじゃないですか? ムラ・マサの新作『R.Y.C』もそうだし、「BBCが選ぶ今年の新人」みたいなやつでも、ポストパンクのバンドが3つぐらい入ってて、スクイッドとかかっこいいなって思うし。狙ったかどうかはわからないですけど、ストロークスのアルバムもその流れになっていて、2020年の重要なアルバムになるんじゃないですかね。ジュリアンも「カムバック」みたいなことを言ってたし、すごい自信あるんだろうなって。

―去年の大みそかのブルックリンのライブで宣言してましたよね。

川谷:それってすごいことだなって。ジュリアンはちょっと前に「エド・シーランがこんなに売れてて、なんでアリエル・ピンクが同じくらい売れてないのか」みたいなことも言ってたけど、今また時代が変わってきたと思うんですよ。ポストパンクの勢いが増してきたところで、今回のアルバムもポストパンクっぽい「The Adults Are Talking」で始まる。時代をちゃんと捉えてるというか、凄く波に乗ってるときって、いろんなものが付いてきちゃうから、ストロークスもそこに入ってる感じがしました。



ムラ・マサ『R.Y.C』収録曲「No Hope Generation」

―ゾーンに入ってる、みたいなね。具体的な曲で言うと、どの曲が好きですか?

川谷:先行で出た「At The Door」はシンセのフレーズだけでずっと行き切ってて、すごい最新型のアルバムが出るのかと思ったら、次の「Bad Decisions」はいかにもストロークスな感じでしたよね。で、一周聴くと……結局「At The Door」が一番好きだなって。とにかくアルバム全体で音がいいんですよ。分厚いけど、ちゃんと隙間があって、詰まってはないのに、物足りなくないっていうか。「At The Door」もシンセの音めっちゃ太くて、ドラムが入ってなくても全然成り立ってる。なかなか難しいことですけど、それをサラッてやってる感じもすごい。逆に「Bad Decisions」は一番聴いてなくて、「At The Door」のシンセ聴きたくなっちゃうっていう(笑)。




―その感じは今のストロークスの聴き方として一番正しい気がする(笑)。「At The Door」をはじめとした半数の曲のエンジニアは、ジュリアンのソロ『Phrazes For The Young』(2009年)にも関わっているJason Laderみたいです。

川谷:ソロをやりながら変わってきた部分もあるかもしれないですね。ザ・ヴォイズも最初はストロークスっぽかったけど、去年出したシングルはソロっぽい感じになってて。俺もゲスとインディゴとふたつずっとやってるから、ゲスがインディゴっぽくなったり、インディゴがゲスっぽくなったりって、どうしても避けられない問題というか。で、去年のヴォイズがソロっぽいっていうことは、ストロークスの新作はストロークスっぽくなるんじゃないかと思ってて、そこは予想通りそうだったかなって。

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