ピエール中野と手島将彦が語る、現在の音楽業界に必要なメンタルヘルス

手島将彦(以下、手島):凛として時雨には、2004年に一度、僕が主催していたイベントに出ていただいたんですよ。16年ぶりですね。

ピエール中野(以下、中野):お久しぶりです。

ー中野さんは、2019年10月に発売された手島将彦さんの著書『なぜアーティストは壊れやすいのか?』を自ら購入してくださって、Twitterで発信してくださいました。どういう経緯で本を手にされたんでしょう。

中野:SNSでたまたま見かけてすぐに購入したんですよ。僕がなんとなく思っていたことが、文章で明確になっていて感動して。僕も同じ悩みを抱えている人を助けたいっていう気持ちがあったのでツイートするべきだと思いました。悩んで音楽を辞めてしまった友人もいたし、最悪死んじゃう人も出てくるテーマじゃないですか。そういうことを身近で目の当たりにしていると、こういう本はしっかり紹介していかなきゃいけない立場に僕はあると思うんです。僕自身も精神的に大変だった時期があったし、身近にいる障害を抱えている人たちに対してどう向き合っていくかが書かれていたので、もっと広まればいいなと思いますね。

ー本を出して半年ほど経ちますが、反響とか手応えはありますか?

手島:反応もあるし、読みましたって言ってくださる方はいるんです。こういうテーマってミュージシャンも実は関心があるし、関係者も含めて薄々必要性を感じている。でも、やっぱり発言に慎重な人が多いんです。本当は色々発信したいんだろうけど、特にここ10年くらいはミュージシャンが悩みや発言を自分の中に閉じ込めてしまうことが多いかなと感じていますね。

中野:ミュージシャンも関係者も、目を背けたい気持ちなのか、どこか拒否反応が出てしまっているんじゃないかなと思います。発言すると、やっぱりプレイヤーとしての信頼に関わってくるんですよ。もしツアー途中で精神的に参られてしまうと困るなっていうこともあると思いますし。僕の知り合いのミュージシャンで限定公開にしてSNS上で弱音を吐き出す方もいたりするので、やっぱり公には言えないんだなって思います。言ってしまうと、良くも悪くもいろいろなことを言われるので。

手島:世の中のメンタルヘルスへの理解が薄いということがある。だから弱い気持ちを吐露してしまうと仕事に影響が出るんじゃないかと思ってしまいますよね。僕が本を書いた理由の一つとして、そういうメンタルに問題を抱えてしまった人との接し方さえ知っていれば、どうにかできるかもしれないということがあって。周囲の人がメンタルのことを知ろうとしないから、結果的にトラブルになることもあるんです。解決方法もそれぞれ違うし、こうすればいいっていう断定はできないけども、知識があることでお互いに何か次のステップに進めることもある。知らないということが一番つらい結果を招くんですよね。

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