ネイキッド・カウボーイの覚悟「俺はどんな時もタイムズスクエアに立つと決めた」

ネイキッド・カウボーイことロバート・バーク氏は、COVID-19時代も毎日稼働(Photo by Michael Brochstein/SOPA Images/Shutterstock)

20年間、ブリーフ姿でパフォーマンスしてきたネイキッド・カウボーイことロバート・ジョン・バークが、米NYのクイーンズの自宅からタイムズスクエアに到着するまで以前は1時間30分かかった。それが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とソーシャル・ディスタンシングの時代、なんとも意味深だが、たった13分で通勤できるようになった。

数百万人のニューヨーカーは現在も自宅待機しているが、ネイキッド・カウボーイは今日も健在だ。ストリートパフォーマーで、政界にも立候補したことのある49歳は、さかのぼること数十年前、カウボーイハットとブーツ、ブリーフとギター1本を携えてタイムズスクエアで演奏を始めた。COVID-19ごときに邪魔されるつもりはない。ただ、ひとつだけ妥協を許した。いつもの衣装に、赤白青のマスクが加わった。

人気がないタイムズスクエアに一人立つ裸のカウボーイ(写真)

「たしか25年前かな、俺は一世一代のエンターテイナーになると決心した――ニューヨークを代表する歴代No.1の存在になって、人々をインスパイアし、影響と活力を与えるんだ、と」。彼はタイムズスクエアへ向かう道中、ローリングストーン誌に語ってくれた。「俺はトニー・ロビンソンズ[訳注:自己啓発書で有名な作家]を絵に描いたような男さ――目標を設定して、定期的に更新して、日々それを実現していく。20年間と6カ月28日、1日も休んだことはない――ネイキッド・カウボーイとして、他の都市で大きなイベントに出張するときは別としてね。俺はコロナでもタイムズスクエアに立つと決めた。その意思は、-7℃だろうと吹雪だろうと、暴風雨だろうが酷暑だろうが毎日欠かさず立ち続けた時と変わらない――何があろうともね」

バークは毎朝早い時間に起床する。数時間かけて支度し、日記を書き(「俺がどれだけ世界を制したか、とか、俺のポジティブさでこの地球からコロナウイルスを撃退するには個人的にどうすればいいか、というようなことさ」と本人)、クイーンズの自宅の周りをランニングする。それから車で職場に向かい、今ではガラ空きとなった駐車場の専用スペースに車を停める(料金を払う必要はない)。それから、バーベル一式をアルコールで消毒し、少々ウォーミングアップ。「たしか、全国レベルで緊急事態が宣言されてから今日で37日目じゃなかったかな」と彼は言った。

全米にCOVID-19の感染が拡大したというニュースで持ち切りになったとき、バークは春休みの行楽客がにぎわうフロリダで仕事をしていた。その前はニューオリンズのマルディグラに参加していた。その後彼はニューヨークへ戻り、再びタイムズスクエアの定位置に戻った。今でも毎日数千人の姿を見かけるという。長年多種多様な人々と接触してきたバークはこう信じている。「どんなに頑張っても、俺は病気にかからないと思うぜ」

「立派な森は、そう簡単に育つもんじゃない。風が強ければ強いほど、樹木も強くなるんだ」と彼は付け加えた。「死にそうな思いをすることで、前よりも強くなれる。一番危険なサンゴ礁に生息する生物が一番強いのさ。ニーチェも言っているだろ、『ベスビオ火山の丘の上に都市を築け』って」

ただし、バークはウイルスを軽視しているわけではない。彼の妻パトリシア(ネイキッド・カウガール)は買い物の際にはマスクと手袋を着用するし、バークも外出はタイムズスクエアと自宅の往復だけだ。定期的にアルコールで手も洗浄している。熱心なトランプ支持者だが、ニューヨーク州政府のCOVID-19対策には称賛を惜しまない。とはいえ彼も、一刻も早い街の再開を心待ちにしている。

その一方で、ネイキッド・カウボーイの生活はおおむね変化はない――ただひとつを除いては。「街がこんなにきれいなのは見たことがないよ。テキサスみたいだ」と彼は言う。「世界中が春の大掃除をしたみたいだな」

Translated by Akiko Kato

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