自由を求め闘う難民女性の物語、新作短編映画『We Do Not Live Here』

メキシコのティフアナにいる難民女性を主題にした短編映画『We Do Not Live Here』(Photo by Rae Ceretto)

現在、世界ではおよそ7100万人の人々が貧困や暴力から逃れて国を追われている。新作短編映画「We Do Not Live Here」は、そうした人々の一人にフォーカスした注目すべき物語である。

『We Do Not Live Here』はレイ・セレット監督、ケリー・スコットのプロデュースで撮影された。今作は4月23日に開催された「Matador Virtual Film Festival」で初公開され、オーディエンス・チョイス・アワードを受賞。そして現在、この作品を長編映画にすべく資金を集めている。

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ケンジーは3人の子供を連れ、その足でホンジュラスから逃げてきた。彼女は今、メキシコ・ティフアナの難民キャンプでアメリカへ入国するための難民申請が認められるのを待っているのだ。彼女の夫と息子はテキサスでそれを待っている。「私たちの子供は悪くないの。この子たちはアメリカにとって悪いことは何もしないわ」彼女はそう言った。

本作品は2019年9月に3日間にわたって撮影された。監督のセレットはこれまで15年間にわたって特に女性の難民への取材をしながら、その写真を撮ってきた写真家でもある。「私は難民キャンプで会ってきた女性たちといつも深いつながりを感じてきたわ。彼女たちはとても色々な目に遭ってきた。でも、暖かくて、強くて、活発なの」、「ウガンダでもメキシコでも、中東でも関係なく、彼女らの物語には共通点があることに気づいたの。こうした女性たちを訪れてきた経験から決心したことが、彼女たちの物語を紡ぎ合わせて映画を撮ること。各地での難民生活の類似点や女性の精神力に特に注目して欲しいですね」彼女はそう述べる。

撮影が始まる頃、メキシコではティフアナの移民キャンプへの援助を打ち切ることが決まり、その多くが閉鎖された。多くの女性たちは本国の家族の安全を気にして撮影されることを拒んだ。しかし、ケンジーの家族はもうホンジュラスには残っていないので撮影を了承したのだ。

撮影が終わった後、アメリカの「Remain in Mexico」政策が効力を帯びた。つまり、亡命希望者は、アメリカとメキシコの国境に到達しても移民手続きを完了するまでメキシコへと送還されることになったのだ。「今は何千もの難民と亡命希望者が法廷へ行くために国境で待ち続けているの。完全にめちゃくちゃだわ。審理の日はずっと延期され続けているし、そもそもほとんどの人に弁護士がついていない。私たちが話を聞いたほとんどの女性たちは本国に帰ってしまったけど、ケンジーはまだ希望を捨てていないの」セレットは言った。

難民やその他の低所得者のコミュニティーは、コロナウイルスのパンデミックの影響で最も強い被害を受けるだろう。セレットとスコットは『We Do Not Live Here』で関心を集め、パンデミックで被害を受けたコミュニティへのサポートを目的としている非営利組織「Playing for Change Foundation」への寄付を求めている。「アメリカにいる私たちにとってパンデミックと同じくらい恐ろしいことは、アメリカ人の受けている保障を受けられない人々にとって、パンデミックはもっと恐ろしいものだということなんです」

セレットとスコットは全社員が女性の企業「Honeypot Productions」を立ち上げ、今作『We Do Not Live Here』はすべて女性のクルーによって撮影された。「ドキュメンタリーの世界では女性は見落とされることが多いわ。でも私は一緒に仕事をすることでそれをダイナミックに変えることができると信じてる。私たちはこの分野でもっと女性たちに活躍の機会を作り出せることを願ってます」とセレットは語る。

Translated by Kohei Ebina

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