辰巳JUNKが解説、今日のポップカルチャーを知るための25の新常識

17.
Nostalgia
ノスタルジア


おもに80年代から90年代に出生した「ミレニアル世代」は多くの規成概念を殺めたニュー・ジェネレーションと喧伝されてきたが、その一方で「ノスタルジア世代」と呼ばれることもある。事実、2010年代のポップカルチャーはこの言葉なしに語れない。Netflixが誇る人気ドラマ『ストレンジャー・シングス』は、80年代アメリカを舞台にしたノスタルジー溢れる作品だ。ポップ・ミュージックもファッションも、80年代風がメインストリームに君臨した。さらには、チャーリーXCX「1999」、そしてノーマニ「Motivation」のミュージック・ビデオに見られるように、90年代や2000年代のカルチャーも人気の参照先である。時代は巡るといえど、情報過多社会において「過去のノスタルジー化」速度は一気に加速した。




18.
The Rise of AI
バーチャルの侵略


2016年大統領選挙におけるドナルド・トランプ勝利において起こった最もSFホラーな疑惑。それは、オンライン性格診断で集めたデータを用いることで有権者のイデオロギーの操作を試みたと告発されたケンブリッジ・アナリティカ社問題だろう。データ社会において、我々人間の思考は簡単かつ過激に操れるものなのかもしれない。2010年代、AIの発達と普及により、ドラマ『ウエストワールド』のような「テクノロジーに支配権を揺るがされる人類の物語」は一気に現実味を帯びていった。その恐怖に対峙するように、グライムスは「We Appreciate Power」にて面白い説得を行っている。「みんなおかしいって言うけれど AI支配は良いこといっぱいよ 最強のコンピュータに忠誠を誓って!」




19.
Climate Change
気候変動


2012年に大ヒットしたYA小説原作ムービー『ハンガー・ゲーム』の舞台が「環境破壊により荒廃したディストピア」であるように、気候変動は西洋ユース・カルチャーに根づいてきたイシューだ。ただし、2019年、相つぐ自然災害、そしてグレタ・トゥーンベリ国連演説によって、ポップカルチャーをも座頭する現象と化した。この年には、アリアナ・グランデやエド・シーラン、ジャスティン・ビーバーらが参加する楽曲「earth」がリリースされている。「We Are The World」のようなスター集結チャリティー・ソングなわけだが、ここで訴えられているものは、戦争や差別への反対意識ではなく、地球や自然を守るための環境保護である。




20.
Censorship
表現規制


表現規制と聞くと、アメリカ的なアイデンティティ・ポリティクス運動を思い浮かべる人も多いかもしれない。しかし、2010年代末には、さらに本格的な問題が取りざたされることとなる。グローバルな利益を求めるエンターテインメント作品は、当然文化が異なる他国でのヒットを見込む。ともなると、国によっては国家機関の規制対象となるセクシャル・マイノリティ等の描写を回避するのがマーケティング的な得策である。2017年、ディズニー映画『美女と野獣』の同性愛シーンが複数の国で反発やカットを受けた騒動により、ハリウッドはブロックバスターにおける「多様性」促進の向きを改めたと報じられている。2019年には、モデルが片目を覆うティファニーの広告が巨大市場の中国で「香港デモ支持」との批判を呼び、同社が謝罪するまでに至った。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE