追悼トニー・アレン、アフロビート・ドラミングを生み出した男

フェラ・クティとともにアフロビートを創造したドラマー、トニー・アレン(Photo by Ennio Leanza/EPA/Shutterstock)



「地球で最も偉大なドラマーが逝ってしまった」

アレンとクティは疲れ知らずの多作チームとして10年以上活動した。その間、クティは1年間に複数枚のアルバムを難なくリリースできた。アレンはClash誌に「フェラと一緒に毎回6時間のライブを週4日やっていた。それが観客の求めるものだったからね」と語ったほど、彼自身も疲れ知らずのパフォーマーだった。

クティは、政府の組織崩壊や愚劣さを分かりやすい言葉を使って辛辣に非難するようになり、これで一気に知名度が上がった。2016年にアレンは「あの挑戦をした彼は正しかった。でも、彼の言い方はあまりにもダイレクトで、そのせいで様々な責め苦を受けたわけだ。何度も逮捕されたし、何度も攻撃された。ミュージシャンだろ? なんでいつも攻撃されるままにしているんだ?って思ったよ」と説明した。クティに対する政府の報復は日増しに過激になり、アレンは1978年にバンドを離れることにした。

クティとのバンド活動の他には、アルバーンとのコラボレーションも話題になった。アレンはアルバーンと共にThe Good, The Bad and the Queenを結成した。これにはクラッシュのポール・シムノン、ヴァーヴのサイモン・トングも参加しており、2007年にセルフタイトルのアルバム、2018年に『Merrie Land(原題)』をリリースしている。さらにアレン、アルバーン、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのベーシスト、フリーがRocket Juice & The Moonというグループを組み、2012年にコラボレーション・アルバムもリリースした。

フリーは「地球で最も偉大なドラマーが逝ってしまった。優しさと自由に溢れた巨大なハートと、唯一無二の深いグルーヴを持った驚異的にワイルドな男だった。アフロビートを発明したのはフェラ・クティじゃない。あれはフェラとトニーが一緒になって生み出したものだ。トニー・アレンなくしてアフロビートなしだ」とInstagramに投稿した。

近年のアレンは再びルーツのジャズに立ち返り、自分のヒーローであるアート・ブレイキーに捧げたEPをレコーディングし、2018年にはジェフ・ミルズとタッグを組んで『Tomorrow Comes the Harvest(原題)』をリリースした。今年初旬には南アフリカのトランペット奏者である故ヒュー・マセケラとのコラボレーション『Rejoice(原題)』もリリースされた。

「今日、私たちは音楽史上最も偉大なドラマーを失った。リズムもパターンも非常に複雑で、高尚なコミュニケーション力を求められる彼の創造物を適切に言い表す言葉はまだ生まれていない。彼は異世界の人だった! 音楽の匠であり、思想の達人だった」と、ミルズはコメントで述べている。

世間にはドラミングとリズムを刻むことを同じと考える人が多いが、アレンは一度もそんなふうに思ったことはなかった。2016年のインタビューで彼はこう言っている。「ドラマーによってはソフトにプレイすることの本当の意味を知らないようだね。彼らの教科書には書いていないから。私は必要とあらば、ドラムだけで満場の大喝采を得ることができる。でも、繊細なプレイだってできるよ。川の流れのような静けさでね」と。

Translated by Miki Nakayama

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