米国コロナ死亡者数がベトナム戦争上回る、トランプ大統領は「我々はよくやってきた」

ホワイトハウスのジェームズ・S・ブレイディー記者会見室でコロナウイルスのパンデミックについて会見を行うトランプ米大統領と米疾病対策センターのロバート・レッドフィールド長官(2020年4月22日 ワシントンDC)(Photo by MICHAEL REYNOLDS/POOL/EPA-EFE/Shutterstock)

米現地時間4月28日夜、ついにコロナウイルスによる死亡者数が5万8365人に達し、ベトナム戦争で死亡した米国民の数(5万8220人)を上回った。「見えざる敵」が優位に立つ一方で「トンネルの先の光」は見えないままにもかかわらず、トランプ米大統領は政府による対策を称賛している。

コロナウイルスによる合併症で死亡する米国民の数が上昇し続ける中、トランプ米大統領は、ウイルス封じ込めを目指す国を挙げての努力を「見えざる敵」との「戦争」だと表現した。米国の介入で泥沼化したベトナム戦争時にも使われたフレーズだ。2020年4月28日、時代を超えた2つの悲劇は米国民の犠牲者数という点で並んだ。

4月28日夜にジョンズ・ホプキンス大学が発表したところによると、米国のコロナウイルスによる死亡者数が5万8365人に達し、ベトナム戦争で死亡した米国民の数(5万8220人)を上回った。わずか2ヶ月の間に6万人近い米国民がコロナウイルスの犠牲になったのだ。米国で最初の犠牲者が伝えられたのはワシントン州で、2月29日のことだった。専門家の多くは、死亡者数がさらに増えると考えている。ベトナム戦争では、同様の死亡者数に達するまでに20年(1955〜75年)かかった。

コロナウイルスのパンデミックと米国史上でおそらく最悪の戦争との間には、犠牲者数以外にも共通点が見られる。どちらにも普通とは異なる「敵」がいて、当代の大統領は国民に状況の真実を伝えようとしなかった。「トンネルの先の光」は、当時のニクソン大統領らが国民に戦争の終わりが近いと思わせるために頻繁に使用したフレーズだ。トランプ現大統領もまた「トンネルの先の光」という表現を使い、政府がコロナウイルスを抑え込んでいると思わせて国民を安心させようとしている。

ベトナム戦争との共通点も、現大統領には関係ないようだ。「自分を含むトランプ世代の人間は“トンネルの先の光”というフレーズを、嘘偽りのない確信を伝える言葉だとは受け止めないだろう。無実を訴えようとする時に“私は詐欺師ではありません”と言うのと同じようなものだ」とジェームズ・ファロウズはアトランティック誌に書いている。「我々はそのような時代に生きていられないし、こんな言葉に納得できるはずもない。」

トランプの態度も特に驚きではない。ベトナム戦争へ行きたくなかった彼が、骨に異常があるという診断を受けて徴兵を逃れた話は有名だ。米国大統領という立場の今のトランプは、コロナウイルスという戦争から逃れる訳にはいかないはずだ。ところが彼はどうにかして責任を回避しようとしている。パンデミックの脅威に対する専門家の警告を、トランプがどれほど無視してきたか数えきれない。彼は数週間に渡りコロナウイルスの深刻さを過小評価して、まるでウイルスはたちまち消え去るかのように振る舞っていた。「いつかまるで奇跡が起きたかのように、(コロナウイルスは)消えてしまうだろう」とトランプは、2月27日に断言した。その後自分の予言通りにならないことが明らかになった時トランプは、米国内のコロナウイルスによる犠牲者の責任を他人に押し付けた。「私はいかなる責任も負わない」と、3月の記者会見で発言している。(ローリングストーン誌ではトランプ政権の対応を追っているが、多くの失策や異常な事例が発覚している。)



4月27日の会見でトランプは記者から、ベトナム戦争全体を通じた死者の数よりも6週間でより多くの米国民の犠牲者を出した大統領は再選されるにふさわしいか、との質問を受けた。するとトランプは、220万人がウイルスによって死亡する可能性があるという以前の誰かの試算を持ち出し、さらに人工呼吸器やウイルス検査の導入を推進してきたとする最近の決まり文句で反論した。「我々はよくやってきたと思う」と締めくくった後ですぐに、「1人でも多すぎる」と言って大統領は会場を後にした。

・米大御所キャスターが語る、トランプ大統領のコロナ対策「大統領として恥ずかしい」

Translated by Smokva Tokyo

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