ウガンダ発、独裁政権と対峙する音楽コミュニティの力

「ピープル・パワー」をスローガンに掲げて活動するボビ・ワイン(Photo by Isaac Kasamani/AFP/Getty Images)



大統領選への出馬表明後、何者かによって運転手が殺害

10年以上前から「ゲットーの大統領」として知られるワインは、大統領選への出馬を表明して以降、公の場でのパフォーマンスを禁じられている。また政府は、ワインによる「ピープル・パワー」運動のトレードマークとして支援者がかぶっていた赤いベレー帽も禁止した。何度も逮捕されているワインは政府による監視下に置かれ、酷い仕打ちにも耐えてきた。2018年にワインの運転手が殺害されたが、実はワイン本人を狙ったという説もあり、少なくとも彼に対する強烈な脅しにはなった(ウガンダ政府に本事件に関するコメントを求めたが、回答がなかった)。

ワインを巡るこれら一連の出来事は、国内のみならずアフリカ全土における彼の評価を高めた。南アフリカを代表するポップスターのイボンヌ・チャカ・チャカはワインを「尊敬するウガンダのネルソン・マンデラ」と呼んだ。少々大げさな比喩のように聞こえるが、全くの的外れという訳でもない。ワインの主導するピープル・パワー運動はこれまでのところ特定の政党と協力関係にはないが、若者や貧困層を政治の世界に引き込んだ。人口の7割近くが25歳未満で、かつ貧困が当たり前の国では、ムセベニのような大統領に対する不満が生まれるのは自然の流れだ。

「ムセベニは、現政権が腐敗し能力の無いことを認識している。国民は変化を熱望している」と、ナショナル・メディア・グループの編集担当ジェネラル・マネジャーを務めるダニエル・カリナキは言う。彼はウガンダ最大の独立系新聞社デイリー・モニターの政治コラムも担当している。「これまでムセベニには、ボビのような自分にとって脅威となる人間が存在しなかった。今の時代を象徴する脅威だ」

2019年12月のある土曜日、カンパラ北部の郊外にある、ワインが家族と暮らすプール付きの白い豪邸を訪ねた。ドアを何度かノックしたが返答がなく、15分後、テリークロスの白いバスローブを羽織った彼が眠そうな目で現れた。

「ああゴメン、今起きたところなんだ」とワインは、バツの悪そうな笑みを口元に浮かべた。彼はジンバブエでのコンサートを終えて、昨晩遅くに帰宅したのだった。「すぐに支度するから5分待ってくれ。」

よく手入れされた庭にバナナの木が立ち並び、コンクリートの高い壁に囲まれた邸宅は静かだった。ワインは最近、妻と子どもたちを秘密の場所に匿っている。「家族に危険が迫っているんだ」とワインは言う。

家の中はオープンで広々としたスパルタン風だが、ただキッチン横のライブラリーだけは違う雰囲気だ。一方の壁には家族の写真が掛けられ、近くに小型のアコースティックギターとハンドドラムがある。そして隅にはたくさんの音楽関係と人権関係の受賞記念品が並んでいる。もう一方の壁は本棚で、最上段にはトーマス・サンカラの生涯を偲ぶ一文が書かれたサッカーボールが飾られている。「アフリカのチェ・ゲバラ」と呼ばれたサンカラは、1983年にブルキナファソの大統領に就任したが、4年後に暗殺された。また、ラスタファリ運動における神の化身とされたエチオピア皇帝のハイレ・セラシエの肖像も置かれている。セラシエもまた、最後は暗殺された人物だ。

ソーシャルワーカーでもある妻のバービーがいないと、ワインはやや頼りない様子だ。「俺の靴がない。靴下も見つからない」と言いながら、彼はベッドルームから出てきた。黒のボタンダウンシャツに黒のズボンを履き、青いブレザーを羽織った彼は、驚くことに服に合う靴も靴下もちゃんと履いているのだ。

Translated by Smokva Tokyo

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