ウガンダ発、独裁政権と対峙する音楽コミュニティの力

「ピープル・パワー」をスローガンに掲げて活動するボビ・ワイン(Photo by Isaac Kasamani/AFP/Getty Images)



「ウガンダの音楽界がもうひとつの議会になっている」

少なくとも半ダースのアーティストが、ワインとピープル・パワーの支援を受けて選挙への立候補を表明している。「ウガンダの音楽界がもうひとつの議会になっている」と、ダンスホール・アーティストのドクター・ヒルダーマンは言う。彼もまた、国会議員に立候補している。「人々は国会議員に自分たちの声を代弁して欲しいと思っている。しかしそれが叶わない時、今度は俺たちが彼らの代表になることを求められるんだ。彼らが味わっているつらい経験を代わりに吐き出して欲しいのさ」

2019年9月に行われたコンサートでは、ウガンダにおける政治色の濃い音楽の草分け的存在であり、自らも国会議員に立候補しているロナルド・メインジャが、ムセベニを批判する内容の曲を歌った。しかも客席にはムセベニ本人がいたのだ。ここ数カ月間、ヒルダーマンとメインジャのコンサートをブッキングするプロモーターがいなくなった。メインジャが明かしたところによると、彼には脅迫電話も掛かってきたという。「君からの電話でも、疑ってしまうようになった」と彼は言う。「“罠かもしれない”と思ってしまうんだ。奴らは俺たちが若者に真実を伝えていることがわかっていて、それが嫌なのさ」

政治をテーマにした音楽に走るのは、路線変更の一種だと批判的に見る評論家もいる。「実際のところ、音楽は儲けが少ない」と音楽プロモーターのルワンガは言う。「だからボビの成功にインスパイアされたあらゆるアーティストが、彼と同じ方へ向かっているんだ」

長年に渡りムセベニを支援する同志であるべべ・クールも、批判的な立場を取るひとりだ。彼は、立候補したほとんどのミュージシャンが選挙に惨敗するだろうと予想する。「理由の第一は、彼らには資金力が無いこと」と彼は言う。「第二に、彼らには教養が無い。第三に、集まったファンの数がそのまま票に結びつく訳ではない」

ホゼ・カメレオンはカンパラの市長選に立候補している。彼は批判を承知しているが、立候補した誠実な動機を伝えたいと強く願っている。「カンパラの市長になって名前を売ろうとしている訳ではない」と彼は言う。「市長になってビジネスクラスで移動したい訳でもない。そんなことはとっくに実現している。可能性を否定する人々へ自分のレガシーを伝えたいんだ」

ウガンダ青年民主党のリーダーで、かつてワインの政治アシスタントも努めたデニス・トゥムへアウェは、音楽コミュニティが決定的な力を発揮するだろうと信じている。「ムセベニを引きずり下ろすためにメジャーなアーティストで対抗する動きは、彼にとって織り込み済みだ」と彼は言う。「我々は勝つための革命を起こしているのだと思う」


コンサートのキャンセルを発表する記者会見へ向かう途中で逮捕されたワイン(Photo by Badru Katumba/AFP/Getty Images

ボビ・ワインは、2021年の選挙でほぼ間違いなく敗れるだろう。もしも彼が実際に出馬でき、生きて結果を見られれば、の話だが。うわべは民主主義を装っているものの、ウガンダの政治は機能的な民主主義とは程遠い。「ムセベニが全てをコントロールしている」と、マケレレ社会調査研究所のセルンクマは指摘する。「彼自身が裁判官を任命している。軍幹部のほとんどは彼と出身地が同じだ。2017年に彼は国会内へ軍隊を送り込み、議員らを襲わせた」

セルンクマ曰く、ムセベニ政権は合法的な独裁政権だという。「現在の独裁政治は、目に見えない形で行われている。民主主義が機能していると見せかけているのだ。ムセベニは、選挙であからさまな不正を行うことはない。彼はとてもずる賢い」と彼は言う。ムセベニの過去5回の大統領選挙における得票率は、59〜75%だった。「彼は自分がオボテやアミンのように見られないように非常に気を遣っている」とナショナル・メディア・グループのカリナキは言う。「彼にとっては、何でも合法的に見せることが重要なのだ」

Translated by Smokva Tokyo

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