デビュー40周年を迎えた松田聖子80年代の10曲、加山雄三の永遠さに近いものがある



1981年10月発売、7枚目のシングル『風立ちぬ』。作詞が松本隆さんで、作曲が大滝詠一さんですね。大滝さんの曲が初めてアイドルで歌われたという曲です。聖子さんを発掘した若松さんに直接、若松さんのビジョンってなんだったんですか? っていう話を聞いた時に、答えは明快でしたね。「音楽性と文学性」だとおっしゃっていました。聖子さんは特に音楽に詳しいわけでもないし、洋楽が好きだったりするわけでもない。でも、どんな曲でも歌いこなせる歌唱力があるということは確証を持てた。いわゆる歌謡曲では、異種配合的なマジックは生まれないだろう、ニュー・ミュージック系の、彼の言葉を借りれば、小難しい作家を起用したほうが聖子が活きるんではないかってハッキリおっしゃっていましたね。それが財津さんの起用であり、作詞で言えば松本隆さんであった。文学性ということで言いますと、若松さんの愛読書が堀辰雄さんの『風立ちぬ』だった。初期のシングル曲のタイトルは若松さんが決めたとおっしゃっていました。「風立ちぬ」も「風は秋色」もそうですね。



1981年10月発売の4枚目のアルバム『風立ちぬ』から「一千一秒物語」です。さっき申し上げた若松ディレクターが意図した「音楽性と文学性」。音楽性を支えたのが大滝詠一さんですね。この曲も作曲が大滝詠一です。松本さんが大滝さんに依頼したわけですが、1981年10月は大滝詠一さんがアルバム『ア・ロング・バケーション』が発売されてから約半年後ですね。大滝さんの怒涛の復活の後です。大滝さんは自身のCDシリーズ「ソングブック」に書いていましたが、松田聖子さんに曲を提供した時には、自分のメロディがアイドルにどこまで通用するのか試したかったと。アルバム『風立ちぬ』のA面が大滝詠一さんで、B面は財津和夫さん、杉真理さん、鈴木茂さんで書いているんですが、A面の5曲は大滝さんのアルバム『ア・ロング・バケーション』とシンメトリーになっている。そして、この「一千一秒物語」というタイトルは稲垣足穂さんという作家の出世作なんですよ。音楽性と文学性がこの一曲だけでも両方あるという曲です。松田聖子さんデビュー、その後の曲には色々なストーリーがある。その要素を歌いこなしたのが松田聖子さんだった。1982年1月に発売になった8枚目のシングル『赤いスイートピー』をお聴きください。

Rolling Stone Japan 編集部

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