デビュー40周年を迎えた松田聖子80年代の10曲、加山雄三の永遠さに近いものがある



1982年4月発売、9枚目のシングル『渚のバルコニー』。この曲のカップリングが「レモネードの夏」でした。両方とも呉田軽穂さんですね。さっき山口百恵さんの話がちょっと出ましたけど、女の子の主体性というか意志がハッキリ出るようになったのが、1970年代と1980年代の違いじゃないでしょうか。百恵さんも主体性のある女性ではありましたけど、百恵さんの主体性に発揮の仕方と、聖子さんの歌の中の主体性の持ち方がかなり違う。来週もこの話になると思います。このアルバムの中に「ピンクのスクーター」っていう曲があるんですが、これもまた面白い曲なんです。「わざと冷たくして気を引くの? それがいつもの手と知りながら走る」。相手の男の子がわざと冷たくして自分の気を引こうとするんですね。主人公の私はそれを見透かしている。分かっていながらそれにのったようなフリをして、スクーターを走らせるっていう恋の駆け引きの心理ストーリー。その辺が1970年代の女性の歌詞とは決定的に違うと思いましたね。

それともう一つ違いがある。「渚のバルコニー」は渚、「風立ちぬ」は高原でしょ。そして次のアルバムくらいからスキー場が登場してくる。舞台が高原とかスキー場、南の島、ユーミンがアルバム『SURF&SNOW』で描いたリゾートというのが、聖子さんの歌の大きな舞台になってくる。『SURF&SNOW』が発売されたのが1980年12月です。1970年代では手が届きそうもなかったリゾートという場所が、歌の背景になってくる。それを最大限に活かした、最大限に自分のものにした、自分のバックグラウンドのように歌ったのが松田聖子さんだった。彼女の声がそれに実によく似合っていたと言うのが1980年代の松田聖子さんの最大の特徴であり、彼女の存在感であり、ヒットの理由なのではないか? という感想を抱きました。もう1曲、そういった曲を聴いていただきます。1982年7月発売の10枚目のシングル『小麦色のマーメイド』。



1982年7月に発売の10枚目のシングル『小麦色のマーメイド』。リゾートホテルのプールサイドですよ。映画みたいでしょう。今この曲を聴きながらふと思ったんですが、若大将シリーズでお馴染み加山雄三さん。こういうホテルのプールサイドとか高原とか渚というのが似合った日本の俳優、アーティストは加山雄三さんだなと思ったら、松田聖子さんは1980年代の女性版若大将かなと思いましたね。だからどうということじゃないですけど(笑)。この曲もですね、「嫌い あなたが大好きなの 嘘よ 本気よ」という女の子の恋愛心理の裏表、好きと嫌いの使い分けというのが松本さんらしいですね。

Rolling Stone Japan 編集部

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