クラフトワーク、1975年の秘蔵インタビュー「音楽には始まりも終わりもない」

「アウトバーン」とテクノロジー

ヒュッターとシュナイダーのアイデアは、最先端のキーボードと電子パーカッションを駆使して、ビジュアル性が高く、耳心地の良い音楽を作り出すことを中心に膨らんでいく(実際『アウトバーン』は、イージーリスニング・チャートにもランクインしている)。「常にメロディがあって、そこに僕らが肉付けしてストーリーを描き出すんだ」と言うヒュッターは、自らを音楽界の映画監督と考えている。「映画の脚本のようなものさ。カメラがある特定の場所に焦点を当てる。そこへ僕らが、特大レンズを操りながらズームインしているような感じさ」

アルバムバージョンの「アウトバーン」は、レコードの片面全編にわたる超大作だ。抒情的なフレーズが、音楽のドライブ旅行の各シーンを説明している。「広大な谷」に「太陽の光の筋がきらめく」のどかな風景から始まって、やがて「白線と緑の草原」が果てしなく続く幻想風景へと続き、時折ポルシェだかメルセデスだかがスピードを上げて抜き去っていく。歌詞はすべて彼らの母国語だ。ヒュッターはその理由をこう説明した。「ドイツ語は、僕らのリズムと同じように機械的で、ぶっきらぼうだからね」




「アウトバーンは僕らの音楽にうってつけの舞台だった」とヒュッター。「あえて意識したわけじゃない。なんとなくシンセサイザーを弾いていたら、アウトバーンという単語がふと浮かんだんだ。しばらく考えているうちに、どんどん広がって展開していった。まるで映画のようにね」

明らかに、クラフトワークは車やその他テクノロジーの象徴を「お楽しみ」以上のものと考えている。「テクノロジーを否定することはできない」とヒュッターは言い切った。「60年代後半にはそういう傾向もあった。田舎に帰れ、というようなね。気持ちは分かるよ。でも、テクノロジーはずっと存在する。テクノロジーと向き合って、上手に付き合っていかなくちゃ。僕らはそれを音楽にとりこんだ。上手く操れるようになればなるほど、自分たちも進化できるんだ」

Translated by Akiko Kato

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