松田聖子、松本隆との史上最強コンビで描いた新たな女性像



1983年2月発売、12枚目のシングル『秘密の花園』。聴きようによってはかなりエロチック。作曲は呉田軽穂さんです。この曲の中には、「風立ちぬ」や「赤いスイートピー」に出てくる主人公は登場していませんね。だって、ママの目を盗んで月明かりの岬に来るんですよ。このママっていうのが松田聖子さんの歌の中の一つのキャラクターですね。お母さんとかは言わない、ママ。そういう育ちの女の子っていう設定なんでしょう。ママの目を盗んで月明かりの岬に来る、真夜中に呼び出されたわけですよ。ただ、相手の彼の方も緊張しているわけです。そこで「キスしていい?」と訊いたんでしょうね。真面目な顔して言ったんでしょう、でも彼女に軽くいなされてしまうんですね。女の子の方がちょっと大人です。「ルックスは割といいから もてるのも仕方ないけど」、「私を口説くなら三日月の夜にして」ですよ。恋の主導権という言い方をするとしたら完全に女性にありますね。演歌の中や従来のアイドルのラブソングの主導権は常に男性が持っているわけですよね。女性は引っ張り回されたり、裏切られたり、騙されたり、すがったりというのが多いわけですが、松田聖子さんのラブソング、ラブストーリーは女の子が主役であります。そんな曲を続けてお聴きいただきます。1983年4月、「天使のキッス」。彼女は21才になりました。



これも作曲が細野晴臣さんですね、恋の駆け引きの曲。泳げないフリをわざとするんですよ。愛してるって言わせたいから瞳をずっと見ちゃったりする。誘惑されるポーズの裏で誘惑している、ちょっと悪い子ですね。ちょっと悪い子っていうのはどんな女の子か? 史上一番コケティッシュなアイドル、そして男の子をからかったアイドルと言えそうですね。明るいエロティシズムがある、自由奔放で時に健気、聖子姫のツンデレ・ポップ(笑)。これが女性の憧れと希望であり、男の子にとってはちょっと手の届かなさそうな距離になったんではないかと思っております。もう一曲、こんな曲があります。1983年6月発売の7枚目のアルバム『ユートピア』収録の「ハートをRock」。

Rolling Stone Japan 編集部

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