ローリングストーン誌が選ぶ、史上最高のアカデミー受賞・ノミネート作品15選

3. 主演男優賞(1940年)

『独裁者』よりチャールズ・チャップリン(写真右)、1940年(Photo by Everett Collection)

同部門へのノミネート:チャールズ・チャップリン(独裁者)、ヘンリー・フォンダ(怒りの葡萄)、レイモンド・マッセイ(エイブ・リンカーン)、ローレンス・オリヴィエ(レベッカ)、ジェームズ・ステュアート(フィラデルフィア物語—受賞)

ここで、この年のそうそうたる面子をおさらいしておこう。謎めいた寡夫とシェイクスピアばりの転落を描いたヒッチコックの初期の名作からジョン・スタインベックの名作の映像化が描き出した典型的な普通の人間像、喜劇王によるインパクト大の反ナチ諷刺、伝説的な長身俳優が解放者エイブラハム・リンカーンとしてのイメージを確立した作品など、1940年は豊作だった。最終的に主演男優賞はジェームズ・ステュアートに渡ったものの、75年後の世界を知った上で『独裁者』のクライマックスのチャップリンの心の叫びを見せつけられると、彼に肩入れせずにはいられなくなってしまう。

4. 主演男優賞(1951年)

『欲望という名の電車』よりマーロン・ブランド、ヴィヴィアン・リー、1951年(Photo by Everett Collection)

同部門へのノミネート:マーロン・ブランド(欲望という名の電車)、ハンフリー・ボガート(アフリカの女王—受賞)、モンゴメリー・クリフト(陽のあたる場所)、アーサー・ケネディ(原題:Bright Victory)、フレデリック・マーチ(セールスマンの死)

ブランドとボガートは、オスカーという栄冠を求めてふたたび戦うことになる。だが、この年の初対決は、政権交代のようでもある。ハリウッド黄金期の紆余曲折を経験したスター俳優は、キャサリン・ヘップバーンとのロマンチックな冒険作のおかげで(生涯初で唯一の)オスカーを持ち帰ったが、メソッド派(訳注:メソッド演技法という役柄の内面に注目し、リアルな演技を追求する演技法の訓練を受けた俳優)のブランドが『欲望という名の電車』のスタンリー・コワルスキーとして獣的な変化を遂げた姿は、まさにスター誕生の瞬間だった(あるいは「ステラ!」と叫ぶシーンのほうが強烈だったかもしれない)。1952年の『革命児サパタ』と1953年の『ジュリアス・シーザー』でブランドはアカデミー賞に再ノミネートされ、1954年の『波止場』でようやく主演男優賞を射止めた。これほどの快挙で肩を並べられるのは、アル・パチーノくらいだ(実際には、ベティ・デイヴィスとグリア・ガースンが5連続という快挙で勝っているのだが)。

5. 主演俳優賞(1967年)

『卒業』よりダスティン・ホフマン、1967年(Photo by Everett Collection)

同部門へのノミネート:ウォーレン・ビーティ(俺たちに明日はない)、ダスティン・ホフマン(卒業)、ポール・ニューマン(暴力脱獄)、ロッド・スタイガー(夜の大捜査線—受賞)、スペンサー・トレイシー(招かれざる客)

ここで、往年のハリウッドスターたちとは明らかに一線を画している、ニューハリウッドのスターたちの登場だ。米犯罪史上に名を残す銀行強盗を描いた『俺たちに明日はない』で主演俳優賞にノミネートされたウォーレン・ビーティや注目株として頭角を現したダスティン・ホフマンのように、まさに世代交代が起きていた。ポール・ニューマンがノミネートされたのも、彼が完璧な反逆者を演じ切ったからだ。その一方、同じくノミネートされたトレイシー(役柄を演じ切った数日後に他界したため、死後のノミネーションとなった)と最終的に同賞を手に入れたスタイガーは、いずれも人種というセンシティブな問題に関わりながらも、最終的に賢明な判断を下す愛国者の熱血漢を演じた。古い価値観がいまだ健在であることを映画という夢の工場が証明しようとしたのも事実である(両者と共演したシドニー・ポワチエが助演男優賞部門にさえノミネートされなかったことにも注目したい)。

Translated by Shoko Natori

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