ガンズやエルトンも逸話を残した伝説のナイトクラブ、コロナ禍で存続の危機に

ウエスト・ハリウッドのナイトクラブ「トルバドール」も新型コロナウイルスのパンデミックを生き残ろうと闘っている多くのナイトクラブの一つだ。(Photo by Chris Pizzello/Invision/AP/Shutterstock)

「私たちには資金援助も、企業向け財政支援も、収入もない。でも支払い請求書はいつも通りに届く」とオーナーのクリスティン・カラヤンが言う

米カリフォルニア州ウエスト・ハリウッドの「ザ・トルバドール」はポピュラー・ミュージック界で数々の逸話を生んできた有名ナイトクラブだ。ハリウッドヒルズから車ですぐの場所にあるため、1960年代と70年代にはジョニ・ミッチェル、ジャクソン・ブラウンなどのローレル・キャニオン在住のシンガーソングライターたちが数多く出入りしていた。

1970年にはエルトン・ジョンが初アメリカ公演をここでおこなっており、これがアメリカでのブレークの引き金となった。このとき、ニール・ダイアモンド、デヴィッド・クロスビー、レオン・ラッセルなどが観客として来場していた。1986年にゲフィン・レコードがガンズ・アンド・ローゼスと契約を交わしたのは、彼らがここでおこなったライブを観たあとだ。今では熟練のスターから駆け出しの若手アーティストまで出演するナイトクラブとなっており、スターが集まるグラミー・パーティの人気会場にもなっている。

ビリー・アイリッシュやザ・ブラック・クロウズなどの特別ライブを定期的におこなっていたこのクラブの業績は近年好調で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによってもたらされた脅威ほど大きな危機に瀕したことは開店以来一度もなかった。オーナーのクリスティン・カラヤンはスタッフの解雇を余儀なくされ、2人を除く全ての従業員を失った。そして今、彼女は従業員の給料を確保する目的でGoFundMeを始めた(4月初めにスタートして以来、1000人を超える人々が6万ドル近く寄付している)。

新型コロナウイルスが原因で困窮しているのはトルバドールだけではない。1300以上の飲食店が結束してNational Independent Venue Associationを立ち上げ、集客が収益に直結する職種が必要とする支援をもっと簡単に受けられるように政府機関に法改正を求めている。今回の大打撃を緩和する法的措置が取られなければ、これらの飲食店の多くが年末までに廃業せざるを得ない危機感を抱いていると、NIVAの報道担当者が語る。

トルバドールは高額な公演のために貯蓄していたことが奏功し、今年後半の惨状を予測してその公演を延期した。カラヤンはトルバドールの今後を思うと不安が増すばかりだとローリングストーン誌に語る。彼女は困窮する飲食店を救う法改正を訴え、トルバドールなどの飲食店が地元のコミュニティ、アーティスト、ファンにとってどれだけ重要な存在であるかを呼びかけている。

【画像】1970年8月25日、トルバドールで演奏するエルトン・ジョン

Translated by Miki Nakayama

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