石若駿が語るドラム哲学、音と人間のハーモニー、常田大希らと過ごした学生時代

藝大にて、常田大希らとの出会い
刺激的な「化学現象」を求めて

ー話は前後しますが、東京藝大ではどんなことを勉強したんですか?

石若:オーケストラや打楽器アンサンブル、民族音楽の授業などを受けたり、もちろんピアノや楽典、理論や音楽史も勉強しました。あとは高校の頃から現代音楽を勉強したかったんですよね。それで大学1〜2年のときに、一柳慧さんや三善晃さん、福士則夫さんや武満徹さんの音楽を勉強するうち、自分のなかでバチっと来たんです。そこから日本人が創る現代音楽を演奏したいと考えるようになりました。

ーその一方で、「閃光ライオット」に出たこともあるとか。

石若:(常田)大希と一緒に出ましたね。その頃はSrv.VinciとかMrs.Vinciよりもっと前で、誰も知らないバンド名で(笑)。僕はひたすら速いスウィングフィールとビッグなビートを行き来して、大希はギターを鳴らして、その頃から拡声器も使ってました。ジミヘンっぽいサイケだけど、マイルス・デイヴィスとやってた頃のジャック・ディジョネットがいるみたいな感じ。審査員はみんな唖然としてました(笑)。


石若駿も参加した、常田大希率いるmillennium paradeのライブ映像

ー常田さんは当時から「ヤバイやつがいる」みたいな感じだった?

石若:そうですね、見た目からして音大生っぽくなかったし。チェロがすごく上手で、オーケストラの授業でもよく一緒にやってました。そうそう、大希が大学をやめるとなって、(彼にとって)最後のオーケストラの定期公演で、「今日で大希とのオケも最後だね」「おう」みたいなやり取りをしたあと、本番前の舞台袖にみんな集まったらピッカピカのスーツを着ていて(笑)。「一番カッコイイの着てきたわ~」って。

ー爪痕を残していった(笑)。

石若:でも、そういうところも彼が持っている音楽の強さだと思うんですよ。何かをやめるってパワーがいるじゃないですか。そこで踏み切れる勇気がある。自分がやるべきことをしっかりわかっている。僕はどちらかというとやめれないタイプというか、楽しさを優先する方なので。

ー最近は他にも、藝大出身の友人たちや若い世代が活躍していますよね。

石若:小田朋美さん角銅真実さん、網守将平さん、坂東祐大さん、上野耕平くん……。共通して言えるのは、その人自身の音楽がちゃんとあるっていう。

ー同世代やバックグラウンドの近い人たちが続々と世に出ている、そういう手応えは自分のなかでありますか?

石若:ありますね。それぞれが花開いていって、しかもそれが全部繋がっている。「俺たちがやってる」という感じがします。

ー君島くんは「スタートの違う人たちが同じところで遊んでる」と表現してましたけど、出自やジャンルを超えた交流の広がりも、今現場で起こっていることの面白さなのかなと。

石若:今までなかったことかもしれないですよね。ジャズ側にいると特にそう感じます。ジャズはひたすら訓練・鍛錬・修行みたいなところがあったけど、ここ数年であり方が変わってきた。そういう世代だと思いますね。僕もいろんな音楽に興味があるから、飛び込んで友達作ったり酒呑んだりしてきたので(笑)。もっと不思議な化学現象が欲しくなったというか。そういう流れが世界的にもあったと思うし、それに影響された部分もあると思います。今はそれが普通の感覚ですよね。


Photo by Kana Tarumi

ー世界的な流れといえば、millennium paradeを見てても思うけど、石若くんや常田さんを中心とした界隈にとってブレインフィーダーの存在も大きいのでは?

石若:衝撃的でしたね。音楽はもちろん見せ方もかっこいいし、自分たちもああいうことができたらいいなというのは、常にどこかで意識していた気がします。

ーサンダーキャットがAnswer to Rememberを聴いてると言ってましたよ

石若:僕もビックリしました。「マジでうれしい!」と思ってたら、サンダーキャットのバンドで叩いてるジャスティン・ブラウンがホセ・ジェイムスの公演で来日公演したときに「Answer to Remember is DOPE」ってメッセージがきて。「ありがとう」「次に日本に来たらハングしようぜ」とやり取りしてたら、今度はJDベックってドラマーからも、いきなりインスタで「You’re fucking sick man!」と連絡がきました(笑)。

ーAnswer to Rememberはすでに海外のミュージシャンにも刺さり始めていると。今後はもっと海外にも出ていきたい?

石若:そうですね、向こうでライブしたいという気持ちはずっとあって。まずは実際にやって感触を見てみたいです。

ーそして今後の活動は……と質問しようにも、やってることが多すぎてどこから聞けばいいのか(笑)。

石若:忙しいですね(笑)。でも楽しいことしかやってないし、ドラムの椅子に座れば自然と頭も切り替わるので。そういう意味で、スタンスはずっと変わってない。今後も自分から生まれるものを大切に、あったかいうちに提供できるよう動いていけたらと思っています。

●石若駿はさらなる地平へ、新世代のリーダーを引き受ける覚悟と今思うこと(Answer to Rememberのインタビュー)




石若が率いるSMTKは、彼と細井徳太郎(Gt)、松丸契(Sax)、マーティ・ホロベック(Ba)の4人組。今年4月に発表した1st EP『SMTK』を経て、5月20日に1stフルアルバム『SUPER MAGIC TOKYO KARMA』をリリース。後者には荘子it(Dos Monos)が参加した「Otoshi Ana feat.荘子it」も収録。




『SUPER MAGIC TOKYO KARMA』
SMTK
2020年5月20日リリース


『SMTK』
SMTK
発売中

SMTK_official (@SMTK_official) / Twitter
https://twitter.com/SMTK_official


Editor = Yukako Yajima
取材協力 = 新宿Pit Inn

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