ノラ・ジョーンズが語る新しい挑戦、母親としての役割、孤独感を癒す音楽の力

ノラ・ジョーンズ(Photo by Diane Russo)

6月12日に約4年半ぶりの最新アルバム『ピック・ミー・アップ・オフ・ザ・フロア』をリリースするノラ・ジョーンズにインタビュー。アーティストとしての新しい挑戦と、彼女のソングライティングへの思いを探る。

『ピック・ミー・アップ・オフ・ザ・フロア』はピアノ・トリオを軸としたジャズに根付いたサウンドを広げながらも、ノラ・ジョーンズらしい、ジャンルに振り分けることができないユニークなメロディーと優しく切ない声が特徴的なアルバムだ。

タイトルは日本語で「私を引き起こして」という意味で、ノラ本人は、リリース発表時に「ここ数年、この国、この世界に生きてきて、どこかに “私を引き起こして” という感覚があるのだと思う。立ち上がり、この混乱から抜け出して、どうにかしたい、という思いが」とコメントを出していた。2016年からしばらくの間、コラボレーション・シングルの連続リリースというプロジェクトを開始させ、アルバムを作ってツアーに出るという、いわばミュージシャンのルーティン・ワークに背を向けていた彼女だが、今回、アルバムをリリースするに至った理由は何だったのだろうか。

また、本来、このアルバムは5月8日にリリースされる予定だったが、新型コロナウイルスの影響を受けて、発売日が約1カ月延期となった。それを受けて、ノラは急遽アルバムに収録されている楽曲のシングル・リリースを行い、自宅からミニ・コンサートのライヴ配信を行った。アルバムでは、“人とのつながり”をテーマに孤独などの困難に直面しながらも乗り越えていこうとするストーリーが全曲を通して綴られており、今の世界と通ずるものがあると、彼女は語る。世界が乗り越えようとしている危機に関しても、思いを聞いた。


ー『ピック・ミー・アップ・オフ・ザ・フロア』は「私を引き起こして」という意味だと伺いました。今回のアルバムはどのような意図で制作されたのでしょうか。

ノラ:実は特にアルバムを作ろうと思って作ったわけではないの。シングルのレコーディングを続けて、アルバムは作らない予定だった(笑)。そうこうしているうちに、シングルのレコーディングの時に曲がいっぱいできあがっちゃって。そういった曲たちを聴いていたら、なぜだかすごく気に入って、曲にも結構まとまりがあることがわかったの。一緒に並べても違和感が全くなかった。聴いていくうちにテーマみたいなものも、自然とできあがっていったのだけれど、それぞれの曲に私が思っていることや考えていることを反映していたからやっぱり無意識に最初から一貫性はあったのかもしれないわね。今の社会に生きていて、どこかに抜け出したいと思うことは、みんな理由は違えどある気がしていて。そういう思いや、人と繋がることに思いを巡らせて歌詞を書いたわ。それをアルバムにしてみたかった。

ーアルバムを作っていた昨年は「今までで一番クリエイティヴだった」と伺いましたが、そう感じた理由があれば教えてください。

ノラ:本当にかなり頻繁に色々な人とセッションとかをやってそう思ったんだと思う。そんな経験は初めてよ。毎回、違う人と音楽を作って、新しい薪を火の中に入れていくような感覚。そして、その火がだんだん大きくなっていくの。それが私にインスピレーションを与え続けてくれて、アルバムという形になったの。

ー私たちとしては、インスピレーションがアルバムという形になって、新しい音楽がまた聴けて嬉しい限りですが、アルバムで音楽を発表することはやはり特別な意味があるのでしょうか。

ノラ:あんまりそういう風には考えないようにしているんだけど、このアルバムは、とてもパーソナルな曲が多くて、憂いや孤独に溢れていて、今、私達が直面していることを考えるととても不思議な感じがするわよね。うん、今までとは確実に違うサウンドになっていて、結構気に入っているわ。独自の方向性を持っているアルバムだと思う。

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