亜無亜危異、デビュー40周年で取り戻したパンクの初期衝動「ようやくピストルズに勝ちに行ける」

かつて抹殺した『’80維新』を語る

―そして今年の1月17日には「デビュー40周年祝賀会 プランクス・イズ・ノット・デッド」と題して、1stアルバム『アナーキー』と2ndアルバム『’80維新』の曲だけを全曲演奏するライブをリキッドルームで行ないました。あれはどうでした?

仲野:あれはスタッフのナイスアイデアでね。バンドのなかからはああいう企画はなかなか生まれないから、素晴らしいなと思って。意外と上手にオレたちの尻を叩くじゃん!って。




―1stアルバムの曲はこれまでもライブでたくさんやってきてますが、『’80維新』の曲はほとんどやってこなかったですもんね。

藤沼:やってこなかったから、けっこうたいへんだったよ、リハが。「ここ、どうだっけ?」みたいな。

寺岡:あのアルバムは自分たちで抹殺してたんですよ。

―どうしてですか?

仲野:「タレントロボット」が入らなかったから。オレとしては「タレントロボット」が『’80維新』のヘソになる曲だったわけよ。ところが、当時の事務所のやつ曰く「レコ倫にひっかかった」と。それで「『タレントロボット』を入れられねえんなら、出さねえぞ!」ってオレが言って、みんなも「そうだ」って感じになってたんだけど、そのあと事務所のやつに呼ばれて「じゃあ、ほかの曲は捨てるのか?」みたいなことを言われたらしくてね。もう一回ミーティングして決めるってことになって、最終的に多数決になったんだけど、オレ、4対1で負けたんだよ。「出したくないひと」って聞かれて手ぇ挙げたら、オレだけでさ。「揃いも揃って裏切りやがって!」っていう。

―その一件から抹殺したい気持ちになったと。

仲野:オレはね。




―でもリキッドルームで久しぶりに聴いたら、ポップな曲が多くてすごくいいなと思いましたよ。「やつらをわからせるためにも もっと叫んで叫んで」と歌われる表題曲なんか、歌詞もいまの気分にピッタリくる気がしましたし。

仲野:うん。でも当時は、雑誌のレコ評で音楽評論家に悪く書かれてさ。「“530”」っていうスローの曲が入ってるんだけど、レコ評で「亜無亜危異、2枚目にして失速」って書かれて、ムカついてね。糸井重里も「RCサクセションは信じられるけど、亜無亜危異は作り物だ」とかなんとか書きやがって。「糸井、コノヤロー!」みたいな。

―「“530”」を聴いた当時は、僕も正直、スローな曲をやるには早すぎないかと思ったりしたんですけど、最近のライブであの曲を聴くと、やけに沁みるんですよ。さっき話に出た2018年1月の新宿LOFTで茂さんが「マリはいなくなっちゃったけど、4人でも亜無亜危異やりてえんだよ」って言って、そのあとこの曲を演奏した際には、涙が出るくらいグッときちゃって。

仲野:ああ。オレも意外とそうなんだけど、当時、マリがメロウな曲を好きだったんだよ。あいつはデヴィッド・ボウイとかT・レックスが好きだったんだけど、メロウな曲が特に好きでね。だからメロウなフレーズは伸一じゃなくて、けっこうマリが弾いてたりするんだよね。

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