亜無亜危異、デビュー40周年で取り戻したパンクの初期衝動「ようやくピストルズに勝ちに行ける」

『パンク修理』レコーディングの裏側

―ところでスムーズに進んだレコーディングのなかで、茂さんの歌入れも早かったんですか?

藤沼:レコーディングの後半は茂のヴォーカルにピントを合わせて進めたんだけど。茂に対しては寺岡が指導員になって、ダメ出しをすごいやるのよ。

―寺岡さんが一番厳しいって、『亜無亜危異ヒストリー タブーの正体』にも書いてありましたね。

寺岡:そんなに厳しく言ってるつもりはないんですけどね(笑)。

―今回はどういうところで厳しかったんですか?

仲野:『パンクロックの奴隷』のときはオレ節で歌っても文句言われなかったんだけど、今回はオレ節になると、寺岡が「ちょっとメロディが違うから、もう一回聴き直して歌ってくれる?」とか言ってきやがって。

寺岡:曲によっては、そうやっていつもの茂節じゃないところを引き出したほうが面白いっていう狙いがあったんです。「ノー天気の子」とかがそうなんですけど、その曲なんかはそうやった結果、新しい感じが出せたと思うしね。逆に「ゴッドセイヴだぁ」みたいな曲は茂節が炸裂していて、それはそれですごくいいと思う。そういう意味でバリエーションが出せたんじゃないかと思います。

藤沼:「ノー天気の子」は、いまの若い連中がやってるようなパターンをオレたちなりにやってみたらどうだろうって思って作った曲で。

―あえて歌メロを活かすと。

藤沼:そうそう。あれは歌メロがちゃんとしてるから、オチが生きてくるんであってね。

仲野:まあ、難しかったよね。ちょっと二枚目ふうに歌ってみたりしてさ。オレなりにチャレンジしたんだけど。

藤沼:「そういうの得意だ」とか言ってなかったっけ?

仲野:まあ、いちおうオレ、二枚目だからさ。

藤沼:もうあいつの画面、消してくんねえ?(笑)

―わははは。それから歌詞に関して言うと、「洗脳ごっこ」とか「総理大臣」なんて曲は非常にタイムリーですよね。いまの世相を反映していて痛快です。歌詞を書いたのって、まだ新型コロナ感染がここまで拡大する前だったんですよね?

藤沼:うん。中国では蔓延してたけど、日本にはまだそれほど広まってないときだったから、そのへんのことはそれほど意識しないで書いてた。まあ、「洗脳ごっこ」も「総理大臣」もいつの時代にも言えることだと思うんで、特に書き直したはしないでそのままやっちゃおうと思って。


リリックビデオのイラストは藤沼が担当

―「パンクのおじさん」では、「若気の至りは使えねえ」と歌われます。つまりいまの自分たちなりのパンクってことですよね。

藤沼:「若気の至りは使えねえ」っていうのは、言い訳できないけどやるよ、っていうことよ。「若気の至りで」って言うのは言い訳じゃん? 「若気の至りだから許してね」ってことでしょ? で、そんな言い訳はいらないからやっちゃうよっていうのが、これ。

―なるほど。曲はシンプルなものが多いながらもなかなかバリエーションがあって、例えば「檻の中の民主主義」はちょっと異色だったりします。こういうハードコアな曲は、亜無亜危異ではこれまでやってませんでしたよね。

藤沼:やってなかったね。コバンがああいうハードコアみたいなのを好きでよく聴いてるんですよ。それでまあ、ああいうのを入れてもいいんじゃない?ってスタッフも言ってくれたので。

仲野:4人のなかでコバンが一番ハードコアを聴いてるからな。飯食ってるときまで聴いてるから、消化に悪いんじゃねえかと思うんだけど(笑)。

小林:確かに好きなほうかもしれないね。何言ってるのかわかんないのがいいっていう。「檻の中の民主主義」は、伸一からデモをもらって、自分なりにどう処理しようかって考えたんですけど。伸一の思いとの違いとかもあったかもしれないけど、まあ、結果的にこれでよかったかなって感じですね。

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