亜無亜危異、デビュー40周年で取り戻したパンクの初期衝動「ようやくピストルズに勝ちに行ける」

亜無亜危異はいたずらが似合うバンド

―今回、特に新しいことにチャレンジできたという曲はどれですか?

藤沼:さっきも話に出たけど、「ノー天気の子」はオレらのパターンにない構成の曲で、あれは面白かったな。初めに「願いを込めて さあいま走りだそう」なんてメロディアスに茂が歌って、「そんなわけねえだろ?!」って言って早くなるっていう。

寺岡:「てなこと言われて、その気になって」(植木等「ハイそれまでヨ」)みたいなことだからね。そうやって、ニヤっとできるところがあるのがいいよね。

藤沼:うん。あと、最後に入ってる「世界に羽ばたけロックスター」って曲で、アーミーの行進曲(ミリタリーケイデンス:リーダーの呼びかけにそのほかの隊員が答える形式で唱和される)みたいなことをやっていて、あれもオレのなかでは新しかった。『フルメタル・ジャケット』(スタンリー・キューブリック監督の戦争映画)を観ていて思いついたんだけど。



―茂さんはどうですか?

仲野:今回作ってて思ったのは、亜無亜危異が確信犯的になってきたってことで。以前はそのときの雰囲気一発で作ってるようなところもあったけど、やっぱり年食って経験も重ねて、オレたちがこんなことやったらこんなふうになるんじゃねえか、そのためにはどうやるのがいいかって、向こう側を見て作れるようになったというか。「ノー天気の子」はまさにそういう曲で、「そんなわけねえだろ?!」ってオチを活かすために、どうやってそのまわりを作るかっていうものだったからね。そういう発想で曲を作るバンドはなかなかないだろ?っていう。伸一がそうやって確信犯的に曲を作ってきて、寺岡がそれを活かすために「茂、もうちょっとメロディアスに歌ってよ」って言ってきて、オレがそうやって歌う。そういうふうにやれるのがいまの亜無亜危異であって、そこが面白いと思う。

―そうやっていろんな遊びを盛り込みながら作ったアルバムってことですね。

藤沼:遊びというか、オレの言葉で言うと、いたずらかな。さっきも言ったけど、年食うとみんなヘンに真面目になるじゃない? ひたすらブルースを極めてそういうギターソロを追求するとかさ。大嫌いなんだよオレ、そういうの。そんなことよりオレはいたずらしてるほうが好きだし、亜無亜危異はいたずらが似合うバンドだとオレは思ってるからさ。

―肝心なのは、いたずら心を持ってやり続けるってことですね。まさに「プランクス・イズ・ノット・デッド」っていう。

藤沼:うん。

―因みに『パンク修理』ってアルバム・タイトルは誰からでてきたんですか?

寺岡:雑談のなかで、ぽろっと出てきた感じだったよね。

藤沼:たいして深く考えずに、面白いからそれでいいかって。小学生が言葉の響きの面白さとかで口に出しちゃう言葉と一緒ですよ。その程度のもんで。

―でも、ほかのバンドは絶対つけなさそう。

藤沼:普通は「そんなのダッセーよ」ってなっちゃうもんな。でも、それができるバンドっていいと思うよ、オレは。ぽろっと出てきた言葉を平気でアルバム・タイトルにしちゃうとか。真っ赤なツナギを揃って着るのとかもね。

―似合っててかっこいいですよ、赤のツナギ。

藤沼:還暦だからね(笑)。

仲野:巣鴨のおばちゃんのヒーローになるかもな(笑)。


「デビュー40周年祝賀会 プランクス・イズ・ノット・デッド」にて(Photo by 渡邉俊夫)

―ははは。いやほんと、還暦迎えてますます面白くなってるのがいまの亜無亜危異だし、そういう状態だからこそできた痛快なアルバムだなって強く思います。

仲野:やっぱり痛快さって大事だと思うんだよね。さっきの話じゃないけど、ピストルズを初めて聴いたときは痛快だったんだよ。英語がわかんなくても音とか歌い方とか、聴いた瞬間、衝撃を食らってさ。そういうのがやっぱ大事で、オレたちはその痛快さをピストルズから学んだんだと思うし。やっぱりパンクは痛快じゃねえとなってことを今回のアルバムでも言えた感じがすごくするよね。

―はい。それにライブで一体感が生まれやすい曲が多く入っているアルバムだとも思うので、ツアーを楽しみにしてますね。

寺岡:予定通り6月からやれるかどうかは、いまの世の中の感じからするとちょっと微妙ですけど(※取材後、来年1月・2月に延期が発表)、『パンク修理』を聴いてもらいたいっていうツアーなので、そこからの曲を中心にやります。

仲野:「パンク修理ツアー」では、ぜひともタオルを回したいね。湘南乃風に負けないように(笑)。みんなでタオルを回す。そういうの、やったことねえから。オレ、やりてえんだよ。いままでああいうの否定してたけどさ。

藤沼:お前ひとりでやれよ!(笑)

仲野:やだよ。みんなでやらねえと面白くねえんだよ!(笑)




亜無亜危異
『パンク修理』
2020年5月27日リリース
新曲全11曲が収録されたCDと、2020年1月に恵比寿リキッドルームにて開催した「デビュー40周年祝賀会 プランクス・イズ・ノット・デッド」のライブ映像を収めたDVDとの2枚組

パンク修理ツアー2020
6月13日(土)福岡Livehouse CB ⇒ 延期 2021年1月23日(土)振替公演
6月14日(日)広島BACK BEAT ⇒ 延期 2021年1月24(日)振替公演
6月27日(土)金沢vanvan V4 ⇒ 延期 2021年1月10日(日)振替公演
6月28日(日)京都磔磔 ⇒ 延期 2021年2月6日(土)振替公演
7月4日(土)札幌BESSIE HALL
7月11日(土) 新潟GOLDEN PIGS BLACK STAGE
7月12日(日)仙台CLUB JUNK BOX
8月15日(土) 名古屋RAD HALL
8月29日(土)高知CARAVAN SARY
8月30日(日)大阪Shangri-la
10月17日(土)神田明神ホール ※詳細後日
10月18日(日)神田明神ホール ※詳細後日
12月19日(土) 沖縄Output

亜無亜危異 公式サイト
http://anarchy-jap.com/

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