XTCのアンディ・パートリッジが語るコロナ感染、バンド末期の記憶、災難続きの屈折した人生

問題の多い青春時代

―アルバム(『Wasp Star』)の曲についてずっと訊きたいと思っていたことがあるんです。とくに「プレイグラウンド」についてなんですが、いまのお話にぴったり当てはまるような気がします――若いうちからバリウムを始めて、問題の多い青春時代を送ったという意味で。あなたの生い立ちと重なるところが相当あるように思うのですが、いかがでしょう?

アンディ:そうだね、やせっぽっちでネクラな子供だったから、学校ではかなりいじめられたよ。あまりにも痩せこけてたんで、学校ではステッキと呼ばれた。それがものすごく嫌でね。運動ができるタイプの子によくいじめられてた。でも実は、彼らもひそかに僕のことが好きだったんじゃないかな。彼らを大笑いさせていたし、絵も描けたしね。

僕は世の中がどういうものか分かってて、それが好きじゃなかった。10代半ばに差しさかるころには、学校はいじめの第一段階で、どうやら学校を出ても同じぐらい濃い、同レベルのいじめが続くらしいことに気づいていた。まるっきり学校と変わらない。いじめる奴、エゴの塊、支配する人間。学校のいじめっ子や意地悪な教師と変わらない。

学校の何がムカつくかって、何も教えてくれないところさ。本来教えるべきことを教えちゃくれない。つまり、疑問を持つということをね。実際は疑問を持つと、問題児扱いされるんだ。

この5~10年で、僕も相当政治的になった。人間性や政治思想を毛嫌いする傾向は、おしなべて大きくなっている。でも、「プレイグラウンド」を書いたときは服従の構造が見え始めたときだった。決して質問は許されない。ベールの向こう側を覗いてはならないんだ。





―もう一つ、ぜひお伺いしたかった曲があります。「チャーチ・オブ・ウィメン」です。この曲ができた経緯を少し教えてくれますか?

アンディ:昔はよく、ほぼ毎日のように、娘の小さい、子供用のミニ・アコースティックギターを持ち歩いていたんだ。娘が「ねぇパパ、学校でギターの授業を取りたいの」って言うから買ってやったんだ。「でもどうせ長くは続かないだろうから、店で一番安いやつにしよう」って思ってね。偉大なるロックギターの聖地、ルーマニア製のやつだったよ。娘は数カ月は一生懸命学校でギターを習って、その後は部屋の隅に忘れ去られて、全く手を付けられなくなった。

すごく小さくて軽いから、僕は家じゅうそれを持ち歩いていた。トイレに持って行ってはポロンポロン弾いて、突っ立ってテレビを見ながら、この小さなルーマニアのギターをポロンポロン弾いていた。

ある晩ニュースを見ていた時だった。どんなニュースかは忘れたけど、イントロの出だしの何小節かを適当に弾き始めた。無意識の状態だったから、何となく出てきたのさ。

ちょうどその数年前、素晴らしい本を読んだんだ。バーバラ・G・ウォーカーという女性が書いた『The Woman’s Encyclopedia of Myths and Secrets』という本だ。おそらく今までで一番好きな本だね。目からうろこが落ちたというか、ガツンとやられた本だった。これまで女性たちが宗教に登場せず、社会や支配層から疎外されていた経緯をまとめた本だった。

そのことが頭の片隅にあったから、女性についての曲や、僕の女性観についての曲を書きたいと思っていたんだ。僕は恥ずかしがり屋で、自分が女好きなのは分かっていたけど、恥ずかしくて女性にどう接すればいいか、どう話しかければいいか分からなかった。拒絶されるのが怖かったんだ。ある意味恐れてもいた。あの麗しきモンスターたちは、僕がお近づきになろうとすると拒絶するんだからね。

Translated by Akiko Kato

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