クラフトワーク「電卓」から発見したJBのファンク 鳥居真道が徹底考察

今でこそファンクという音楽についてそれらしいことを書いているわけですが、学生の頃は、隣接するジャンルでいえば1970年代の都会的なソウルを好んでいました。日本においては「フリーソウル」と呼ばれることもある音楽といったら良いでしょうか。洗練されたコード進行、ハッとするメロディ、躍動するリズム、手練のミュージシャンによる演奏、カリズマティックなシンガーによる痛切で甘美な歌唱といったものに魅了されたわけです。とりわけ、自分が楽器を演奏することもあって、プレーヤーを主役と見做し、個々の演奏を主体にして聴く場合が多かったです。例えば、デヴィッド・T・ウォーカー、チャック・レイニー、バーナード・パーディ、コーネル・デュプリー、ポール・ハンフリーといったミュージシャンが参加したアルバムを探して聴くことに取り組んでいました。彼らの立派なサインが入った個性的な演奏にうっとりするというのがベーシックな聴き方となっていました。この頃はすでに彼らの演奏がもたらす心地よさはリズムに秘訣があるはずという推論を立てて考えるようになっていました。



1970年代の洗練されたソウルを聴きつつも、ソウル自体に興味があったので、例えばピーター・バラカンの『魂のゆくえ』を参考に、レコード屋に行って気になるものを手にとって聴くことはしていました。例えば、サザン・ソウルやニューオーリンズのファンク、JBやスライ、P-Funkなどのレジェンドたちの音源といったものです。けれどもあまりピンと来ない。いや、ピンと来るところもある。ならば完全にピンと来るまで繰り返し聴こう。そんな気持ちで何度も再生するということをしていました。

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