クラフトワーク「電卓」から発見したJBのファンク 鳥居真道が徹底考察

ところで、三角食べをしなさいということを学校で言われませんでしたか。三角食べというのはおかず、ご飯、牛乳を少しずつ順序よく食べていくというものなのですが、わたしが子供のころはこれができませんでした。ハンバーグならハンバーグを平らげて、味噌汁を飲んで、ご飯はふりかけをかけて食べて、サラダは少し手を付けるだけみたいな食べ方をしていました。こういう食べ方を「ばっかり食べ」というそうです。

それがどうしたという話ですが、スタジオミュージシャンの演奏を聴くのは「ばっかり食べ」をしている状態ということができると思うのです。他にも、子供の頃に耳にした曲を今改めて聴いてみるとこんなアレンジだったんだとびっくりすることがあります。それは歌をばっかり食べしていたことの証左だと言えます。

話は冒頭に戻ります。『コンピューター・ワールド』の「電卓」を聴いているときに「JBみたいじゃね?」と思ったわけですが、「電卓」の何に対してJBみたいだと感じたのかという話です。端的に言ってしまえば、細かいフレーズの掛け合いが全体を形作っているところです。つまり音楽の構造が機械仕掛けのようになっているということです。

JBを聴いているときにはこうしたこの構造に気が付きませんでした。これはなぜなのか。

個々のプレーヤーの演奏をばっかり食べする癖があったからでしょう。例えば、モータウン作品を聴く際には「ジェームス・ジェマーソンのベースラインは奇跡」なんて言いながらベースラインばかり聴くところがありました。チームスポーツでいえば、スポーツ選手の神業のようなプレイに注視して、チームがどのように機能させているかということは気にしていないようなものです。つまり俯瞰的な聴き方をしていなかったということです。さらに、JBの音楽はスタープレーヤーの神業的なプレイを前提にしておらず、個々の演奏は比較的匿名性が高いため、とっかかりが掴めずにいました。

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